大ヒット映画『シン・ゴジラ』内で、ゴジラが襲来した際に自衛隊に防衛出動が下令されたことが話題になった。防衛出動とは、自国を防衛するための自衛権を行使すること。具体的には、外部からの武力攻撃が発生、もしくは発生する明白な危険が迫っている際に、自衛隊法と武力攻撃・存立危機事態法に基づき、国会承認を得て内閣総理大臣が命じ、自衛隊が武力行使することを指す。一方、暴徒の鎮圧といった警察権行使のための自衛隊出動を「治安出動」と呼んで区別する。なお、「災害派遣」では武力行使や武器使用は実施しない。

尖閣諸島周辺の海域で、中国公船(奥)を監視する海上保安庁の巡視船(海上保安庁提供/時事通信フォト=写真)。

ただ、防衛出動が可能になる条件である「武力攻撃」の定義については、現在大きな論点になっている。拓殖大学政経学部の安保公人教授は、「政府は従来、『武力攻撃』の定義を『組織的計画的な武力行使』としてきた。しかし国際情勢が変化し、それに至らない、あるいは直ちにそうとは判断できない敵対行為や侵害が発生する可能性も高まっている」と述べ、防衛出動の限界を指摘する。たとえば、尖閣諸島領海警備中の巡視船に対し領海に侵入した外国軍艦などから敵対行為があった場合や、偽装武装要員が突如島嶼に上陸するような場合、それが「組織的計画的」と判断できないとすると、自衛権の行使ができない可能性がある。

(時事通信フォト=写真)
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