プラットフォーム販売のビジネスモデル

2016年12月にトヨタ自動車が、EV開発の社内ベンチャーをグループから集めた4人の社員で発足させたと話題になった。

「それより、うちの方がエンジニアの数が多い。トヨタに負けていませんね」と、小間は笑い飛ばす。GLMのエンジニアは現在12人。確かに負けていない。しかも、その顔ぶれを聞くと驚く。

幻のスポーツカー「トミーカイラZZ」がEV車として復活。

技術本部の本部長である藤墳(ふじつか)裕次は、トヨタのレクサス部門で7年間、車台の設計を担当した課長だったが、小間の試みを知った2010年にGLMのホームページから「入社したい」とメールを送った。当然、同僚や周囲、親も反対した。藤墳は給料が3分の1に減っても、車全体を一から作りたいと2011年に入社した。

「藤墳が技術、僕がマネジメントと二人三脚でやってきました。彼がいたからこそ、部品メーカーも納得してくれたのです」と小間。

藤墳以外にも大手の椅子を蹴って、駆けつけたカーエンジニアたちが多い。小間の言う「とんがった連中」は、巨大メーカーの歯車でいるより、新しいEVを作るということに面白さを感じたのだろう。スタッフばかりではない。部品メーカーたちも興味を感じて、飛び立てるかどうかわからない小さなベンチャー企業に協力した。

「まず高級EVスポーツカーに商品を絞ったことで、客層も明確になりました。部品メーカーなどサプライヤーの担当者の皆さんもそこに面白さを感じてくれたようです。何か新しい車が生まれるというワクワク感ですね。ただ、商売になるかどうかも会社としては気になるところです。幸いなことにGLMを設立した2010年は、ちょうどEVの黎明期で、部品メーカーもEV用部品を検討、開発していた時期なんです」

当時、大手自動車メーカーはまだEVに乗り出す気はなかった。そこに、高性能のスポーツカーを作りたいというベンチャーが現れたものだから、テクノロジー・ショーケースやテストマーケティングとしては部品メーカーにとって都合がよかったというわけだ。

しかも、GLMは完成車だけを売るのではなく、ベースとなるプラットフォームを販売するビジネスモデルも考えていた。これが魅力的だった。プラットフォームというのは、フレーム、シャーシ、ステアリング、サスペンションにモーターやバッテリーなどのパワーシステム、そして制御コントロールユニットを指し、それらをパッケージ化して販売する事業だ。

ボディはユーザ企業が自由にデザインし、GLMが設計を含めて開発委託を受け、ユーザ企業の工場で生産する。あるいは、プラットフォームだけ提供することも可能だ。

「従来の自動車産業の系列システムから新たなエコシステムへ移行するのです。これならば自動車と縁がない企業でもEVを生産できるようになります。現在、アジアの大手自動車メーカーやサービス会社から引き合いがあり、試作している段階です。国内企業からも少しずつ引き合いが増えてきました」