キャリアの寄り道も全てプラスだった
――今だったら周到に下調べしてから選択すると思いますか。端羽さんのキャラクターだと、やっぱり足が先に出るのかも。
【端羽】足が出る方が早いと思いますね。でも様々な経験を重ねて思ったのは、確かに情報をもっと集めておけばよかったかもしれないけれど、それでもなんとかやっていけるっていう自信はついた気がします。留学でも、アメリカまでついて行っても、実際には現地で1年間主婦をしているんですよね。受験勉強も、行ってみたら思ったよりも試験日が近くて大変で、現地で問題集買って一生懸命やるみたいなことをしていて。特に20代はリサーチ不足が大きかったですね。いろんな失敗もしました。離婚もしていますし、早送りの人生だったなって思います、でも、そこからあとは何とかなっている気がします。実際、今毎日がすごく楽しいです。
――それは寄り道だったのかもしれませんが、実際にはプラスになっていると。
【端羽】確実にプラスだと思います。いろいろやって思ったのは、やらないで後悔したことはあるかもしれないけど、やって後悔したことはないなと。
起業が失敗しても、キャリア価値は上がる
――それから、帰国して投資ファンドにまたお勤めになって、その後起業されるわけですが、起業を考え始めてから準備にどのくらいかけていたんですか。
【端羽】何となく起業したいなというのは、留学する前から思ってたんですが、留学していた時に出会った起業したいっていう人のレベルが高すぎて、もうちょっと真面目に働いてからのほうがいいかもと思ったんです。ちょうどそのころ離婚も決めていたので、起業する前にまだ自分には学ぶ必要があると考えて企業で働こうと思って投資ファンドに決めました。いつかは起業したいなと思いつつもアイデアが思いつかず、仕事も楽しかったので、なんとなくゆるゆる過ごしている間に5年経って、ちょうどそのタイミングで、この会社でもう一段上を目指すのかそれとも外に出るか、という時期が来た。2011年の年末に、上司から面談でリーダーシップが足りないって言われて、じゃ、起業してリーダシップがあるのを証明する、というようなことを言ってから、実際会社を辞めたのが翌年の7月なので、半年ぐらい準備する期間がありました。
――すると、漠然と起業したいと思ってから啖呵切って辞めるまでの間は割と長かったわけですよね(編注:帰国後、ふたたび投資銀行に務めた端羽さんは、会社から「若手としては優秀だが、リーダーシップが足りない」と言われて、「上が詰まっている会社じゃリーダーシップなんて発揮できません。自分で起業してリーダーシップを発揮します!」と言って会社を辞めた)。計画的にこのスキルを身につけるとか、そういうことはしていたんですか?
【端羽】何もしていないですね、仕事が忙しかったので。「こんなの仕事しながらなんて無理だよ、やるんだったらちゃんと辞めて、本気でやらなきゃ」みたいなのがありました。今となってはもう少しできたことはあったかなと思うんですけれど。起業のための準備は一切していなかったです。
――一見、行き当たりばったりに見えるけれど、決断してからは集中して進めるということですよね。
【端羽】(決断してからは)すごく頑張りますね。まず起業するって決めて、いろいろな本を読み始めていろんな人に会い、一生懸命自分でプランを作って。人に会っていくうちに今のビジネスモデルができたので、起業すると決めてからはすごく集中してやったような気がします。
――そのあたり、端羽さんのキャリアは逆算型じゃなくて積み上げ型ですよね。
【端羽】そうなんです。もしかしたら遠回りかもしれないし、失敗するかもしれない。でも、失敗したらもう一回やり直せばいいじゃんと思うので。起業するとき、やらない理由が見えなくて。この世の中で新規事業をやろうと思っても取り組めた人はそんな多くないから、万が一失敗しても絶対私のキャリアの価値って上がると考えてますし、投資ファンドの仕事にも戻ってこれると考えたときに、何もリスクはないなと思ったんですよ。別にとんでもない借金を背負ってやっているわけでもないし。そう思ったら、チャレンジすることにマイナスは見当たらなかったという感じですね。