「普通の人が知っている」ぐらいが適切なタイミング

――「大まかな将来のヴィジョンが見えていても、早すぎてはいけない」という話を、森川さんはよくしていますね。

【森川】事業としてやるからには、やはり儲からなければいけなくて、儲かるためにはやはりそこに共感してもらわないといけない。共感を呼ぶためには、理解できなきゃいけないですよね。新しすぎると理解できないので、なかなか難しいところなんです。総論賛成、各論反対みたいなものが大概あるので、そうならないためにはタイミングが重要です。

――早すぎるとやっぱり理解されなくて、事業として回らなくなる、と。

【森川】よくあるのが、人よりも早くやっていろいろ失敗し、ようやく波が来たときに資金が切れて、他が真似して成功する……というようなこと。最悪のパターンですよね。それなら、タイミングが来るまである程度待っているほうがいいと思いますね。

――「このあたりを見ればタイミングがわかる」という目安はありますか。

【森川】まずは、先行指標的なものがあるかどうか。あと、普通の人は最先端の人よりも遅れているというのがあります。最先端の人は新しいものに飛びつくから知っているけれど、普通の人がそれをどれだけ認知しているか。うちの奥さんみたいなIT知識がそれほどない人でも「いいね」って言い出したら、それはちょっともう遅いぐらいですね。

――普通の人が「いいね」と言うのでは遅くて、「知ってる」というぐらいがちょうどいいんですね。

【森川】そうですね。たとえばLINEで言うと、スマホを最近買ってLINEを使いたいというのは、すごくいい状況ですよね。さらにおじいちゃんもLINEを使いたいとなると、かなりいい状況ですよね。だから、この人がいいっていい始めたら、ちょうどいいタイミングだというのを見るようにしています。IT業界にいると、たとえばIoTやビッグデータとか当たり前のように思いますけど、田舎に行って「IoT」って言っても「何ですか?」ってなりますから。

――それが想像できるようになってくると、流行るなということが分かるようになってくるということでしょうか。

【森川】はい、そういうのは結構重要だと思います。昔の話なんですが、ソネット(So-net)さんが「ADSLはソネット」っていうCMをやっていたんです。田舎に行って「ADSLって知ってる?」って聞いたら、「ソネットでしょ」って言ったんですよ(笑)。

――認知はされていたけど、ADSLが何なのかは理解されていなかったということですね。