「衣の下の鎧」を感じさせる
経営をスポーツの世界、たとえばプロ野球に置き換えてみれば、はっきりします。成績の上がらない選手を、いつまでも温情だけで起用し続けるわけにはいきません。1軍から2軍へ落とすことが、結果を追求する集団の当然の行動として行われています。また、戦力外通告で退団ということも普通の出来事です。
監督が甘々タイプで、選手とじゃれ合っているような宴会幹事型だったり、友だち型だったら、そのチームはけっして強くなることはないでしょう。経営というのは、目標を達成しなければなりません。数字が示す事実を受け入れなければならない集団なのです。究極的に言えば、プロ野球チームと変わりないのです。
温情サイド、太陽サイドに立ちすぎて、駄目な部分を切らずに騙し騙し続けていると、結局は全体が駄目になってしまいます。そのことを冷静に肝に銘じておき、切るときは切るという冷酷さも指揮官は併せ持っていないと、部隊は動きません。
そして、その冷酷さを、「衣の下の鎧」として、部下たちに感じさせておくことが大切だと思うのです。年中ちらつかせていても効果はありません。衣の下にあって見えないけれど、この人をナメたら大変だという意識を、部下たちに持たせることです。
温情は必要。しかし温情だけでは駄目。「衣の下の鎧」を感じさせておくことが必要。それが「温情と冷酷のバランス経営」ということだと、私は考えています。
※本記事は書籍『日本電産永守重信社長からのファクス42枚』(川勝宣昭著)からの抜粋です。