昨日の味方を敵にしないための極意

人の心をつかむという視点で進次郎の所作を観察していると、一つ気になることがある。それは、自民党の同僚議員であっても、彼は決して必要以上に仲よくしようとしないことだ。まず、あいさつ代わりに携帯電話の番号を交換するというようなことはしない。会議や会食の日程調整は、事務所の秘書を通せばこと足りる。

派閥にも属していない進次郎の場合、仲のいい議員とも日夜つるむようなことはせず、目的を絞り込んだ勉強会や調査チームを結成し、課題解決への具体的な手法を見出していく。また、政策ごとに連携相手を代え、いわば同盟を結ぶように人間関係を築いている。

永田町では良好な関係を保っていても人はいつ敵になるかわからない。彼も失敗しながら、それを学習している。地元・神奈川県横須賀市の市長選で、応援していた候補者が落選した際、「政治は厳しい道ですね。仲間がつく、離れる。離れたらまたつく。昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵。こんな経験をするのも政治の道なんですね」と、涙を浮かべながら語った。

敵、味方はいつでも変わる。その前提に立ち、政治家は日々腹の探り合いをする。ビジネスでも似たところはあるはずだ。こうしたリアルに即したバランス感覚に秀でているのが、小泉進次郎という男なのだろう。

(文中敬称略)

常井健一
ノンフィクションライター。1979年生まれ。旧ライブドア・ニュースセンター、朝日新聞出版を経て独立。著書に進次郎氏の政治活動を追いかけた『小泉進次郎の闘う言葉』、父・純一郎氏への単独インタビューをまとめた『小泉純一郎独白』は発売即重版。
(青柳雄介=構成 中尾由里子/AFLO=写真)
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