将来の総理大臣候補と注目され、震災後は復興大臣政務官を、現在は、自民党農林部会長を務める小泉進次郎氏。人気の秘訣はなにか。密着取材を続けている常井健一氏に聞いた。
一瞬にして他人とコミュニケーションを成立させるには?
あらゆる世論調査で「総理にしたい人」のトップクラスに躍り出る小泉進次郎(34歳)。彼は演説や討論会、集会などで瞬時にして聴衆の心を鷲づかみにしてしまう。
約3年間、彼の講演や視察、地元活動など、全国300カ所で密着して取材を重ねていくうち、その根本原理が少しずつ見えてきた。
進次郎のコミュニケーション術は、まず相手の名前を覚えることからスタートする。
初対面の人と名刺交換をするとき、まずフルネームをしっかりと確認する。そのうえで「○○さんって、珍しい名字ですね。出身はどちらですか?」「うちの兄貴(俳優の小泉孝太郎)と同じ名前ですね、コウタロウさん!」というように、必ず名前を入れて呼びかける。
加えて、会社名やデザインを見て、「○○さん、このデザインは何を意味しているんですか」などと、目についた特徴的な部分を言葉にして質問する。すると、相手も何らかの情報を出してくるため、本題に入る前に打ち解けた会話が成立するのだ。こうすることで、一瞬にしてコミュニケーションが成立し、信頼関係が構築され始める。
現在、自民党の農林部会長を務める進次郎は、地方の農村に出かけ、意見交換会に臨む機会が多い。その際、進次郎が司会役を務めることも少なくない。ミーティングの司会とは通常、代表的な意見だけをまとめて会合を終わりにする。
だが、進次郎の場合は違う。
「△△さんはこういう意見でした」「こうおっしゃったのは××さんでした」と、一人ひとりの意見を、名前を呼びながら並べていく。参加した人には、「小泉進次郎が自分の話にも耳を傾けてくれた」という好印象が芽生える。しかも、参加者の名前を繰り返し呼ぶため、散会する頃には、あたかも以前から知っていたように名前で呼び合えるようになる。
これらは初対面の相手に対する敬意であり、「私はあなたに関心がありますよ」という証しになる。相手との心の距離が一瞬にして、一気に接近するのだ。
人の名前を覚えるということは、簡単なようで難しい。しかし、進次郎は「名前を覚えるだけで、コミュニケーションの9割は完成する」と考え、それに最大のエネルギーを注ぎ込んでいるように見える。だからこそ、初対面の日はもちろん、その日以降に会ったときにも正確に相手の名前を口にできるのだろう。
▼オキテ 名刺交換の場で相手の名前を覚えるべし