年間100社以上8割は大企業

米シリコンバレーに本社を置くデザインコンサルのIDEO(アイディオ)。過去にはアップルの初代マウスを開発し、現在ではP&Gやサムスンなどとともに画期的な商品を世に送り出す。IDEOは1991年に設立され、以来、独自のコンサル手法で北米、アジア、ヨーロッパに9のオフィスを展開してきた。

日本ではIDEO Tokyoが2011年にオープン。従業員数は21人と少人数ながらも年間100社を超える企業がIDEO Tokyoの門を叩きにやってくる。その8割が大企業であり、三菱電機、資生堂、明治、三菱東京UFJ銀行、DeNAといったように業界も様々。

(左)東京オフィスではメンバー同士で聞きたいことを付箋に記している。(中央)プレゼンの準備をする様子。(右)2010年に米オフィス用家具メーカーのスチールケースと共同開発した「ノードチェア」。

今年2月、米国本社のIDEOは博報堂DYホールディングスより30%の出資を受け、同社の戦略事業組織「kyu(キュー)」の一員となった。今後、ますます日本国内でも認知度が高まると予想される。

では、その具体的な手法とは何か。IDEO Tokyo共同代表のマイケル・ペン氏がこう話す。

「たとえば、明治さんからは最初『チョコレートの新しいパッケージを考えてほしい』と依頼されました。しかし、我々はそこで『本当にそれが明治さんが望んでいることなのだろうか』と問いかけるところからはじめました。『チョコレートの体験自体を変える方法を考えたら面白くありませんか』と課題を立て直していったのです」

企業はコンサルティングファームに対し、特定の問題解決方法を求めたがる。しかしIDEOは企業が製品やサービスに対して抱えている問題を根本的に見直すことにより、新たな問題提起をし、そこにアプローチしていく。明治の場合、それはチョコレートが与える価値そのものを捉え直すことだった。結果として、チョコレートのイノベーション戦略を中長期的に考える部署をつくるにまで至った。