江戸時代の幕藩体制を引きずっている

羽田と成田の話も伊丹と関空の話もシナリオは同じである。要は「この地域にはどういう空港をつくるのが理想的なのか」という明確なビジョンと、何としてもこれをつくり上げるという確固たる意思が行政当局にあれば、はるかに便利な場所にもっと安いコストで世界に冠たる国際空港を建設できたはずなのだ。30年以上にわたる成田闘争もなかっただろうし、補助金や騒音対策費をいまだに払い続けることもなかっただろう。

驚くことに日本の航空行政はビジョンを持つどころか、江戸時代の幕藩体制をいまだに引きずっている。たとえば福岡県には交通アクセス抜群の福岡空港があるのに、近隣の北九州や佐賀にも空港がある。これは筑前、肥前、豊前という枠組みが根強く残っているからだ。東北で言えば、秋田は大館能代空港と秋田空港、山形なら庄内空港と山形空港、青森は津軽藩の青森空港、南部藩の三沢空港、という具合に人口の少ない県であっても2つの空港が設置されている。日本中で100を超える空港がある、という異常さだ。

一方、シンガポールや韓国は逆にチャンギ国際空港や仁川国際空港に投資を一極集中して、アジアを代表するハブ空港の地位を着々と築いてきた。対して迷走50年、行き当たりばったりの航空行政を続けてきた日本では400年前の勢力図でつくられた藩単位の地方空港が乱立し、大半が赤字を垂れ流している。今さら日本の空港がチャンギ国際空港や仁川国際空港と勝負するのは難しいが、これから先を考えたときにチャンスが残されているかもしれない。今後、日ロ平和条約が締結され、ロシアへの渡航条件が緩和される。安倍・プーチン会談で提案された8項目の経済協力プランを具現化していくうえでも、極東ロシアへの直行便は今後、非常に重要な役割を担うだろう。そこでクローズアップされるのが、ウラジオストクまで2時間弱、ハバロフスクまでギリギリ2時間半の距離にある新潟空港だ。

新潟空港は、極東ロシア便で国際ハブ空港になれる。(写真=時事通信フォト)

新潟空港をハブにしてウラジオストク、ハバロフスクをメーンに、イルクーツク、ユジノサハリンスク、中国黒竜江省のハルビン辺りの空路をネットワークする。これがかねての私のアイデアで、上越新幹線の終点を新潟空港に持っていくことも提案している。手をこまねいていたら、極東ロシア便に熱心な仁川にさらわれてしまうだろう。新潟空港は、極東ロシア便で国際ハブ空港になれる。

(小川 剛=構成 時事通信フォト=写真)
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