20~40代中心、女性が全体の6割

モスバーガーには、「ヘルシー」「野菜へのこだわり」「女性目線」というイメージが強い。実際、ISOに基づく独自の「モス食品安全基準」を定めて食材の管理徹底に力を入れるほか、手作りや国内産の新鮮な野菜にこだわった商品開発を行っている。

2014年夏から翌年初頭にかけて起こった日本マクドナルドの異物混入事件はチェーン全体、ひいてはハンバーガー業界全体の売上げに影響したと思われるが、モスフードサービスが逆に伸びているのは、そうした同社の姿勢が消費者の信頼を得た結果と見ることができる。

「モスバーガー」の主要購買層は20~40代が中心で、女性が全体の6割を占めるという。さらにファミリーやシニア層にも目を向け、カロリー低減、減塩などの健康志向の商品の充実を図ってきている。

「創業者の櫻田慧が“医食同源”という考え方を大切にしていたことから始まり、安全はもちろん健康にも配慮した商品開発を進めています。健康への意識が高まるなか、今後もこの方針を積極的に進めていきます」(太田さん)。

低カロリーで栄養価が高い商品が今後は求められる

その方針が強く表れている商品が、2008年より春夏の季節商品として発売された「モスの菜摘(なつみ)」である。バンズの代わりにレタスを使ったバーガーで、サラダ感覚のバーガーとして女性に人気だ。

「菜摘」はバンズの代わりにレタスでパティを挟んだハンバーガー。写真の「モスの菜摘 ソイモス野菜」は、肉ではなく大豆由来のソイパティを挟んでおり、約155kcalと低カロリーな商品。これ一つで生野菜を約120グラム摂取できる。

炭水化物であるバンズを使わないという点で、最近の低糖質ダイエットを意識しているように思えるが、「糖質制限とは関係がない」(太田さん)という。

「生活習慣病の増加や超高齢化を背景に、今後求められるのは、低カロリーで栄養価が高い食べ物です。ファストフードでも対応していくことが必要となるでしょう」(太田さん)。「これまで2つハンバーガーを食べていたところを、1つを菜摘に置き換えるといった食べ方をしている方もいます」(広報担当 角田泰子さん)。

しかし女性客の比率が高いことからしても、実際には、ロカボダイエットのために利用しているという人も多いのではないだろうか。季節商品ということもあり「菜摘」の販売個数は明らかにされていないが、この11月15日から定番商品として通年メニューに組み込まれる。人気の高まりが背景にあることは間違いないだろう。

一方で、このところ例年起こっている、天候不順による野菜生産量の減少がレタスの仕入れに影響しており、「あまり大々的に宣伝できない。一部店舗のみになる可能性もある」(太田さん)とのことだ。