時代を経るほど勝算下がる米共和党
こうした経済統計が実体経済を反映しているのか疑問視する声はある。もちろん、どの統計も完璧ではない。統計操作などの陰謀論は不問にするのは当然として、ネガティブな指摘に対してクルーグマン教授はギャラップ調査(http://www.gallup.com/poll/194816/americans-life-evaluations-improve-during-obama-era.aspx?g_source=Well-Being&g_medium=newsfeed&g_campaign=tiles)を引き合いに、「繁栄を実感している」と答えた比率がオバマ氏就任当時の2008年の48.9%から直近では55.4%まで改善した結果を重視すべきでは、と反駁する。
総じて、これまで散々非難されてきたオバマケアも含め、オバマ政権の経済政策への批判は今回の公的報告書で覆されたと言えよう。財政出動はセイフティネットの拡大、購買力の増強、需要の維持に使われ、トリクルダウンではなくトリクルアップで直接家計を助ける政策に注力してきたのがオバマ政権であったし、実際、過去8年の一般教書演説を聞いていても中間層の復活、真面目に仕事に励むごくごく普通の一般家庭が報われるような政策をとひたすら訴えてきた印象が強く残る。
オバマ政策を踏襲することが米国の国民経済にとって最善との答えが出た今、ヒラリー氏への追い風になるのは間違いない。
なお、米国内では4年に1度の一大イベントを接戦でギリギリまで引っ張らなければ商売上がったり、となる人たちが少なからずいてトランプ推しとなるのはわかるのだが、誰が候補者となろうとも、時代を経るほど共和党の勝算が低くなるのは既に2012年の大統領選で指摘されていた。
2012年当時、ファイナンシャルタイムズなどは“This election could be the Republicans' last chance(今回の大統領選が共和党の最後のチャンス)”としていたが、この年の5月米国勢調査局から新生児における白人比率が初めて50%以下になったことが公表された。長期的にみれば白人以外の投票者の意向がより反映されやすい状況だ。
勝ち目がないのがわかっていたため、破れかぶれでトランプ氏のような候補者を選んだわけではなかろうが、多様化する米国社会への対応に共和党が業を煮やすだけなら、人口動態など全く別の次元の観点からしても、今後ますます大統領への道のりは遠くなろう。
なお、喜々としてトランプ氏優勢と報じたりコメントするのを目にし耳にするが、仮にそうなれば中長期的な経済的混乱が予想されることと、まずファースト・インパクトとして為替市場(対円で米ドルの)、株式市場(米国とそのあおりを受けた日本)で相当の売り圧力が生じる可能性があることについては、どうも眼中にないようだ。