ビジネスメールでこそ感情の共有を

もちろん、どんなテキストにでも顔文字を使えばいいわけじゃないと思います。客観的な事実や情報を正しく記録したり、伝えたり、それを保管するといった書類やデータにおいては、俗に言う「正しい日本語」を使って誰にとっても解釈にブレのない文章を記すべきだと思います。

しかし、友達や家族との日常的なやりとりでメールやメッセンジャーに顔文字やスタンプを多用するというのは、コミュニケーションの性質を考えたら当然のことです。それはもはや、一種の「おもんばかり」だとすらもいえます。

そして僕は、仕事のビジネスメールにおいても、「感情の情報」を正確に伝え合うことが非常に大切なことだと思っています。単なる事実の報告や共有だけなら、テキストだけでもかまいません。しかし、日常的なビジネスメールでのやり取りにおいては、会社のチームメンバーやお客さんに対して、複雑なお願いをしたり、交渉をしたり、時には厳しい指示を出さなければならないようなことがたくさんあるわけです。そんなとき、メッセージの発信者が怒っているのか、ちょっと申し訳なさそうにしているのか、強気でいるのか、それとも弱気なのかといった感情のステータスは、とても重要な情報になります。

感情の情報が正確に共有できていなければ、指示や相談、交渉事はちょっとしたことでトラブルの原因にもつながってしまいます。それくらい、僕たちは複雑な感情の渦の中で人間生活を送っているのです。だからこそ、お互いの感情の状態を正しく共有することは、コミュニケーションを心地よく行うためにも、そしてその目的をちゃんと果たすためにもとても大切なことなのです。

そもそも、ビジネスメールの目的は、日本語を正しく使うことなんかではありません。仕事におけるさまざまなものごとを正しく伝え、共有することです。とにかく生産性が重視される今日の仕事社会だからこそ、デジタルのツールを賢く上手に使えばいいのだと思います。

しかし、仕事で顔文字を使うことはまだ常識的なものにはなっていません。いきなり顔文字を交えてメールを送ったら、ただの「マナー違反」です。だったら、そのマナーを変えればいいのだと思います。そして、それがルール化されていれば誰も不快にはなりません。なぜなら、「感情の共有」は、本来人と人とのコミュニケーションに欠かせないものだからです。

もちろん、顔文字の中には相手が心地よくなるものもあれば、使うだけで不快にさせてしまうようなものもあると思います。それは、普段から僕たちが「言葉を選ぶ」ように、適切に顔文字を選べばいいだけのことです。今自分はどんな気持ちで、どんな表情をしているのだろうか。そして、それをどのように相手に伝えてあげたらいいのだろうか。仕事で一言文章を送るにしても、いつもそんなことを考えながらコミュニケーションをとることができたら人間的で豊かだなぁと思うのですが、いかがでしょうか。

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