実行がスムーズで時間がかからない
マーケティング・リフレーミングは、制約や弱みであっても、企業や地域が逃げずに、受け容れることから広がる可能性に注目する。このリフレーミングのアプローチは、マーケティング上のどのような利点につながるのだろうか。
第1に、マーケティング・リフレーミングは、競争回避の実現につながりやすい。制約や弱みは、負の存在である。あえて新たに取り入れようとする他の企業や地域は現れにくい。だからこそ、制約や弱みに根ざすリフレーミングは独自性や差別化の源泉となりやすい。先に見た京都の花街でいえば、需要の伸びが見込めないなかで、一見さんお断りの慣行を、新たに他の花街が採用することは難しい。このようにリフレーミングには、競争の問題を介して、間接的に弱みが逆に強みになる効果がある。
第2に、マーケティング・リフレーミングは、実行がスムーズである。企業や地域の制約を克服したり、弱みを切り捨てたりしようとすれば、内外に軋轢が生じる。しかし、リフレーミングでは、制約や弱みをそのまま活かそうとする。京都の花街についていえば、一見さんお断りの慣行を廃止することよりも、そこから生まれる希少性を活かした他の事業を展開する方が、スムーズだったはずである。そのほうが、関係者の摩擦が少なくなるからである。
第3に、マーケティング・リフレーミングは、実行に時間がかからない。すでにあるものを活かそうとするリフレーミングでは、弱みの解消や強みの育成に時間をかけたり、投資を行ったりする必要がない。京都の花街についていえば、その新規事業のリソースとなる希少性は、すでにある制約をそのまま残すだけ手に入る。新たに投資をして一からリソースをつくる必要がないわけで、次々と新たな仕掛けを展開しやすい。リフレーミングは、企業や地域のマーケティングのスピーディーな実行にもつながる。
非合理の合理性とでもいうべきリフレーミング。そのマーケティング上の利点を(図2)にまとめておこう。