夫の仕事に影響を与える「妻の存在」

ヘッドハントでの転職もそうですが、仕事を変わるというのは、人生における大きな出来事です。その決断にいたるまでのプロセスは人さまざまでしょうが、そこでの家族、とりわけ妻の役割は小さくありません。いわば「内助の功」を発揮できるかどうかということです。私がヘッドハンターとして関わった人たちを振り返ってもそうです。夫の仕事そのものに、とても大きな影響力を持っています。

私のスカウト活動の経験でも、「ああ、この奥さまだとちょっと難しいかな」と思えるケースもありました。例えば、妻方の実家あるいは妻を中心に家庭が回っている場合です。そこには候補者自身の真の意味での選択権がありません。交渉が終盤に差しかかり、彼の奥さまも賛同してくれて、「じゃあ、お話のあった会社に行けば」という結論になったとしても、これではリスクが高く、当方としては受けたくないというのが本音です。逆に、夫がワンマンで「いいから、俺に文句をいうな!」というケースも好ましくありません。

やはり、本人の意思と奥さまの考え、両方バランスよく、どちらにも偏っていないというのが理想です。つまり、夫婦間のコミュニケーションが図れているかどうかということになります。一般的に、その家の主人を立てるタイプの家庭というのは、だいたいにおいて明るい。それは、奥さまに会えばおおよそ判断できます。

私がいま接点を持っている候補者は、企業の最前線で活躍しているので、プライベートの時間も自己投資に時間を割いている人が多くいます。そうした夫の仕事にかける情熱や意気込みは、一番身近にいる奥様が理解しているでしょうし、職場の悩みとか、人間関係の悩みとかを、奥さまに相談することもあるわけです。すると、奥さまの理解もより深いといっていいでしよう。転職に際しての、奥さまを含めた面談でも冷静な意見を述べてくれます。

夫の転職となると、奥さまの生い立ちや結婚までの社会人生活が影響します。まず、彼女に会社勤めの経験があるかないか。学校を出てから数年間であったとしても、会社という文化のなかに身を置いていれば、そこがどのような原理で動いているのかは理解しているはずです。夫が「いざ、転職」となったら、自身の経験から適切なアドバイスができる可能性は高いと思います。もし、職場結婚なら、より説得力があるのではないでしょうか。

次に妻の実家が、何か商売をしているかどうかということ。よく中小企業の経営者が「実家が小さくても商売をやっていたところの子息は比較的フットワークがいい」といいます。確かに、彼、彼女たちは考え方が柔軟で創造的思考力を必要とする営業職やマーケティング、開発には向いています。一方、公務員の家庭で育った場合だと、既に構築された仕事を着実にこなしていくというよさがあります。