小さな子供や、10代、20代でも老眼になる

老眼というと、中高年からが対象と思いがちです。しかし、実際には若くてもリーディンググラス(老眼鏡)が必要なケースがかなりあり、20代では4%ほどが該当するというから驚きます。特にここ数年で増加しているそうで(※)「スマホの普及が増加を後押ししている」と平松医師は語ります。

※老眼を訴える若者(10~34歳)の割合は、2012年の0.5%から2013年の6.7%に急増しており(眼鏡光学出版調べ)、これはスマートフォンが急速に普及したタイミングと重なる。

「老眼というとあまり印象が良くないですが、単純に『手元の文字が見にくい』という現象です。確かに40歳以上だとなりやすいのは事実ですが、30代はもちろん、10代や20代、場合によっては小さな子どもでも専用のメガネが必要になる場合があります。近くを見る作業が多いと、若くても老眼になる可能性はあるんですよ」

10代や20代では、まさか自分が老眼だとは思っていないため、何らかの病気で見えづらくなったと思って来院するケースが多いそうです。

また若い場合に問題なのは、手元の文字が見えにくいのは、自分に集中力がないからだと思いこんで悩んだり、別の問題だと誤解されるケースがあるため。10代の子供の場合、手元が見えないために勉強に集中できず落ち着きがなくなり、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と勘違いされてしまうこともあるそうです。

「本当は老眼が原因でも、10歳の子が老眼だなんてだれも想像できない。学校の検診で5メートル先の視力を測ると1.0と出たりするので、その子の目が見えないとは誰も思わないのです。教科書があると(文字がよく見えないため)集中力がなくなりますが、遠くを見て遊んだりはできるから、『勉強しないのに遊んでばかりで、この子はぜんぜんやる気がない』と思われる。本人も5メートル先の視力はみんなと同じく見えていますから、自分だけがそうだとは思わないのです」

子供の視力の問題は遺伝よりも、環境が主な原因。特に学歴との相関関係があり、親の学歴が高いと必然的に子供も勉強時間が長くなるため、リスクが高まります。

「子供は自分の症状をうまく伝えられないことがあります。子供の様子がおかしい、最近集中力がなくなった? といった疑問を感じたら、一度(冒頭で紹介した)指を使ったチェックをしてみてください。近くが見えにくくなっていたら、眼科の受診をお勧めします」