トヨタは自動運転で世界の先を行けるのか

【田原】1つ1つ聞きましょう。PFNはトヨタと提携を発表しましたね。トヨタは西川さんたちと何をやろうとしているのですか。

【西川】自動運転の車を走らせるときには、センサーで空間を認識して、前に行ってもいいとか、障害物があるといった判断が必要です。そうした判断は、ディープラーニングでないと難しいだろうといわれています。

【田原】それはわかります。自動運転はGoogleも研究していますね。トヨタが西川さんと組んだということは、Googleに負けたくないということですか。

【西川】トヨタの代弁をするわけにはいきませんが、おそらくそういうことだと思います。

【田原】じつは経産省はいま相当な危機感を抱いています。かつてゲームは任天堂やソニーが自分のところで機械をつくって業界をリードしていた。しかしスマホがプラットフォームになって、任天堂やソニーは小作人化してしまった。自動車業界も、自動運転の時代になるとGoogleにやられて、トヨタやホンダが小作人化するんじゃないかと。このあたりはどのようにお考えですか。

【西川】そうなる可能性は否定できないので、それを僕らが食い止めないといけないと思っています。ただ、自動運転自体はどの会社もできるようになるので、そこで差がつくかどうかはわかりませんが……。

【田原】でも、西川さんのところはGoogleに負けない自信があるんでしょう?

【西川】いまやGoogleも大きな組織になりました。これからコンピューティングの世界が大きく変わる中で、それに合わせて大きな組織が全社的に方向を変えるのは難しい。一方、僕らは40人くらいの会社なので、機動力では負けません。Googleの次の時代をつくりたいと思っています。

パナソニック、ファナックとも提携

【田原】もう1つ、パナソニックとも提携を発表しました。これも自動車ですか。

【西川】はい。家電メーカーは4Kや8Kのテレビをつくっていますが、高いレベルの映像処理技術はすでにオーバースペックになりつつあります。ただ、自動運転の分野では解像度が高いほどいい。パナソニックも、その技術をいま自動車分野に使おうとしています。

【田原】将来はパナソニックが自動車をつくるのですか。

【西川】自動車の部品じゃないでしょうか。要はデンソーやボッシュと同じです。パナソニックはすでにテスラとの協業で電池を提供していますが、それと同じように自動車メーカーに映像処理の部品を提供して、そこに僕らのディープラーニングの技術も使われるというイメージです。

【田原】次は産業機械ですね。ファナックと契約しましたが、これは何をやるつもりですか。

【西川】いま産業用ロボットは人の手で頑張ってチューニングしていますが、まずはこれをぜんぶ自動化していきます。さらに単体のロボットを賢くするだけでなく、ロボット同士がチームワークを組んで一つのことを成し遂げられるようにしたい。たとえばロボットが1台壊れてしまっても、他のロボットがカバーしてあげるというところまでできたらいいなと。

【田原】ファナックは産業用ロボットで世界ナンバーワンですね。

【西川】はい。ただ、先ほどのゲームの話と同じで、脳みそが賢くなったら既存のロボットメーカーは食われてしまうおそれがあります。だから自動車と同じく、僕らが頑張らないといけない。