営業部門が安易な値下げに応じない理由

もともとアメーバ経営は製造業のための特殊な経営方式という見方をされていたが、JALの再建で脚光を浴びたため、今では一般的な会社にも通用するということを理解していただけたようだ。そもそも京セラが部品メーカーとしてスタートした頃、技術集団である製造部門に大量の人員を抱え、営業といえば、製造20人、30人に対して1人というような状況だった。ということは、製造部門できっちり利益を上げることができていれば会社の経営はうまく回る。営業部門と比べて製造部門の収支がより重要だったために、製造の責任者に製造部門の収支を意識させる必要があった。そこからアメーバ経営が始まったのだ。

製造部門にいると、予定原価内に収めて商品をつくればそれでいいと考えがちだ。最近、日本の電機メーカーは経営不振にあえいでいるが、その原因の一つがそこにあると私は考える。つまり、製造部門が市場の動向に敏感であれば、家電が値下がりを続けているにもかかわらず、売れない商品をつくり続けることなどありえない。例えば京セラの製造部門であれば、製造したところで赤字になることがわかれば、工場を止めてしまう。製造部門がより収益を上げられる製品を探して、それに切り替えていく。営業部門も、ばかみたいな値段で製品を投げ売りすると、製造部門が製造してくれないのが目に見えているので、安易な値下げ交渉には応じなくなる。

(唐仁原俊博=構成 小倉和徳=撮影)
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