作業の前後を撮影してネコババを防ぐ!

買い取りに関するトラブルを防ぐのが難しいのは、そもそも依頼者が品物の価値をわかっていないからだ。

「少し値の張るものを買ったら、妻や旦那には黙っているものです。だから遺族が見過ごしているものが、実は高価であることが多い。たとえば釣り竿。故人がこっそり買い溜めていたと思われる釣り竿を数本まとめて売ったところ、80万円になったという話を聞いたことがあります」

書画骨董品や絵画、盆栽なども同様に、遺族はその価値をわかりかねる。家族の誰かに正しい価値をそれとなく伝えておく、もしくは生前公言しないまでもエンディングノートに詳細を記しておくといいだろう。

買い取り額が妥当かどうかという前に、遺品そのものが買い取り業者に盗まれることもある。だからといって品物が紛失したとき、理由もなく業者を疑ってしまうと、それ自体がトラブルの元になる。

「遺品整理業者が作業する前に部屋の様子を数十枚写真に撮っておくといいでしょう。事細かにすべての範囲を撮らずにポーズだけでもいい。業者に作業前後の様子を観察しているとアピールできればいいのです」

遺品整理業者ではなく、故人と遺族間で遺恨が生じることもある。遺品の中から妻に隠していた不倫の写真や手紙が見つかったりするケース。その発端として圧倒的に多いのが、パソコンやスマートフォン(携帯電話)に残されたデータ。仮にデータを消去しても、本体が残っていれば中のデータを高い確率で復旧させてしまうことができるからだ。

「当会ではパソコンやスマートフォンを供養する『お焚き上げ』施設を開設しました」

パソコンやスマートフォンのハードディスクの破壊、供養やお祓いを経て、800度以上の高温でお焚き上げをするという。個人情報の流出によるトラブルも多いため、今後ますます需要が高まりそうなサービスといえそうだ。

木村榮治
北海道小樽市生まれ。2011年9月、一般社団法人遺品整理士認定協会を設立、理事長に就任。現在に至るまで約1万人の遺品整理士を誕生させている。『遺品整理士という仕事』『プロに学ぶ遺品整理のすべて』など著書多数。
(文=小倉宏弥(プレジデント編集部) 撮影=堀 隆弘)
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