ここ10年の投資活動は失敗だったシャープと東芝

営業CF 1兆1076億円
投資CF △1兆7383億円
財務CF 4591億円

これはシャープの10期累計の金額だ。営業活動では入金が出金を上回り、獲得したキャッシュは1兆1076億円だった。年平均およそ1100億円である。

一方、投資活動は「出金>入金」の出金超である。液晶パネル工場新設など積極的に投資を実行したことで、結果的に営業活動で獲得したキャッシュを約6300億円上回る出金だった。

その入金と出金の差額を補うために、シャープは金融機関などから新規調達をしたことで、10期累計の財務CFは約4600億円の入金超になっているわけだ。

フリーCF=営業CF+投資CF

企業が自由に使えるキャッシュであるフリーCFは、「営業CF入金超過額>投資CF出金超過額」という状態であれば生まれる。つまり、営業活動で獲得したキャッシュの範囲内で、投資へ出金を賄うということ。シャープはその原則から外れたことで苦境に陥り、台湾企業の傘下に入らざるを得ない事態を招いたのだ。

『図解!業界地図 2017年版』では、大手電機メーカーについて、利益剰余金の推移についても示している。利益剰余金とは、企業の創業以来の利益の蓄積を示すものだ。赤字は債務超過への危険シグナルである。シャープのそれは、07年3月期7452億円の黒字が、16年3月期は1236億円の赤字に転落している。

医療子会社の売却で、辛うじて10期累計で「営業CF入金超過額>投資CF出金超過額」だった東芝も、16年3月期の利益剰余金は赤字転落である。

シャープも東芝も、ここ10年の投資活動は失敗だった、と断定していい。

ちなみに、リーマンショックなどがあったこの10年間で、一度も赤字を計上しなかった大手電機メーカーが2社ある。その2社とは?

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