総務省が今年1月に実施した緊急調査によれば、地デジ対応受信機を保有している世帯の数は49.1%と、5割に届かなかった。

だがその一方、コンバーターを付ければ今までのアナログテレビでもデジタル放送は見られるし、最近の若い世代はパソコンでテレビを見ている。つまり今の時代は昔と異なり、全国民が一斉に家電量販店に赴いてフラットパネルの地デジ対応テレビに買い替え、アンテナを付けて「ready go!」とはならないのだ。

入力端末は無線(アンテナ受信)か有線(光ケーブル)、出力端末はテレビかパソコン、その受像機もチューナー内蔵の地デジ対応テレビかアナログテレビ+コンバーターということで、デジタル放送を見るための方法が千差万別、何通りも出てきてしまった。

今までだって地デジ対応だからテレビが売れていたわけではない。薄型・ワイドスクリーンで、高品質なテレビへの需要が高かっただけで、それがたまたま地デジ対応だったにすぎない。1インチ1万円と言われていたハイスペックが4000円を切るようになったから爆発的に売れたのだ。調子に乗って50インチの大型テレビを買った人も多々いると思われるが、自宅の居間には大きすぎて、さぞ後悔していることだろう。

そうした需要が昨年の後半から急激に落ち込んだ。ソニーやシャープの業績が悪化したのも、それが大きな要因。今はアナログからデジタルに急いで買い替えようという雰囲気にはほど遠く、様子見の態勢になっているのだ。

制作能力なければ多チャンネルは不要

また地デジ対応に追いつかず、焦っているのがテレビ局の制作サイドだろう。“スカパー”(現スカパーJSAT)の登場で日本もチャンネルが多様化し、各放送局は複数チャンネル化に乗り出した。しかし、チャンネルを使いきれていないのが現状で、視聴者もほとんど付いていない。

私もスカパーで経営教育のチャンネル(757)を持っている。その関係者によると、真面目な内容の24時間放送で隆々と利益を出している数少ない放送局の一つだそうで、ほとんどがポルノかお買い物チャンネルという。

放送局が運営しているチャンネルは、どこもコンテンツ不足でもっぱら地上波の再放送とリピート番組でプログラムを埋めている。海外にコンテンツを求めてNHKあたりは韓国で買い漁ったが、すでに韓流ブームも下火になってしまった。結局、多チャンネル化により、テレビ局は意外に制作能力がないことがわかってしまったのだ。