改正案には多数の漫画家や日本ペンクラブなど表現者側から反発が噴出したが、一方で早期成立を求める声も上がっている。東京都PTA協議会は「児童が性的対象になることが野放しの状態になっている」などと改正推進を訴え、表現者の中からも賛成の立場を示す者が現れた。その一人が日本ユニセフ協会大使も務める歌手、エッセイストのアグネス・チャン氏だ。同氏はこう指摘している。

インターネット上の児童ポルノ発信数
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インターネット上の児童ポルノ発信数

「子どもと思われるキャラクターが繰り返し性行為をさせられ、性的虐待を受けている。そんな漫画がコンビニや有名書店に、かわいい表紙をつけて並んでいる。」「アメリカやカナダなどでは、漫画やアニメであっても、子どもの性虐待を描写したものは国の法律で規制されています。日本が『ロリコン』大国の汚名を着せられてはたまりません」

作家である猪瀬直樹・東京都副知事も3月29日放映の民放BS番組に出演し、実際に何冊かのコミック本を手にしつつ改正の意義を強調した。

「こんなものが書店で普通のコミックと並んでいて、小中学生が買える状況になっている。酷いものは成人コーナーに売り場を変えろっていうだけの話ですよ」

猪瀬氏が示したうちの一冊――『奥サマは小学生』(作・松山せいじ、秋田書店)が私の手元にもある。「12歳」の小学女児が「担任教師」と「夫婦生活」を送るというコメディタッチの作品だ。

ページをめくると、確かに女児を性的に描くシーンが頻出する。率直に記せば、私にもこれが芸術的作品とは思えないが、実は作品中に直接の性行為は一切登場しない。あくまでも「担任教師」が「12歳の妻」を相手に「性的妄想」を繰り広げるだけで、最終的にはそれすらも必死で自制する。深読みすれば、漫画の性表現に過敏反応する“モラリスト”を皮肉った作品に見えなくもない。

しかし猪瀬氏が規制対象の具体例に挙げたことで、作者のもとには抗議や嫌がらせのメールが殺到したという。作品を掲載した漫画誌「チャンピオンREDいちご」(秋田書店)の伊藤純編集長が言う。

「殆どは作品を読んでもいない人からの抗議でしたが、作者の希望で(コミックスは)出荷停止措置を取りました」

早くも改正案の“効果”が発揮され、この作品は“発禁”になったといえるのかもしれない。