僅差での改正案否決知事は再上程の構え

未成年者への性犯罪は6年連続で減少中!
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未成年者への性犯罪は6年連続で減少中!

だが、ここで感情的な賛否論を離れ、もっと冷静な視座から状況を俯瞰する必要があるように思う。まずは日本国内の児童ポルノや性犯罪に関する現況だ。

警察庁の統計などによれば、未成年者が被害を受けた強姦事件は1960年代に比すると10分の1に激減し、近年も未成年者を対象とした性犯罪は減り続けている。イタリアの児童保護団体のまとめでは、ネット上の児童ポルノ発信数も欧米より遥かに少なく、日本が「ロリコン大国」との批判はあたっていないとみるべきだろう。

また、東京都の現行条例は〈図書類又は映画等で、青少年に対し、著しく性的感情を刺激〉するものは「不健全図書」に指定し、子どもへの販売を制限できると定めている。実は現行条例でも漫画等の「行き過ぎた性表現」に規制の網を被せるのは可能なのだ。

にもかかわらず都が今回、漫画やアニメを殊更に問題視する姿勢に出たのは、都に出向して青少年・治安対策本部を司る警察官僚の意向も色濃く反映されている。都議会の参考人として改正案への疑義を表明した首都大学東京の宮台真司教授(社会学)は「警察官僚が手柄を取りたがっているだけ」と一蹴し、改正案の問題点をこう指摘してくれた。

「実在の子どもが被害を受ける児童ポルノの規制は当然だし、子どもを守りたい気持ちは誰もが同じ。漫画やアニメも内容によっては一定のゾーニング(販売などの区分け)は必要でしょう。ただ、今回の改正案はあまりにお粗末。上から目線の道徳観を押し付けるもので、ゾーニングを装った表現規制に過ぎない」

また前出の藤本准教授は改正案18条にも大きな問題があると言う。〈18条6の3 都民は、青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきでないことについて理解を深め、(略)青少年が容易にこれを閲覧又は鑑賞することのないよう努めるものとする〉