意思決定の場に女性が入ることの重要性

【田中】意志決定の場に女性が入るって、本当に想像以上に大事なことです。だって、男性は残念なんですけど分からないんですよ。

例えば、夫婦別姓とか通称の使用という問題1つとっても、男性は結婚して自分の名字が変わるなんていう事態がそもそも想像が付きません。日本ではほぼ100%夫の姓に合わせるのですから。だからそのことによる不利益とか、心理的な負担とか、親の願いとか――親って子供の名前に願いをかけて、画数まで考えてつけるわけじゃないですか。あと下の名前と上の名字のバランスも考えますよね。それが変わってしまうって大ごとですよ。でも、そういう不利益がイメージできない。もしあっても、「男性が婿入りするなんて珍しいですね」みたいな扱いで終わってしまう。

【川崎】うちは夫に入ってもらいましたが、ブーブー言ってました(苦笑)

【上】『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』川崎貴子(ベストセラーズ)【下】『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』田中俊之(KADOKAWA)

【田中】そうですよね。でも多くの女性はブーブー言わない。そういうものだと思っているから。「気付かない」ということと、「不平等がない」ということは全然違うのに、「問題ないんだから平等でしょう? 今の社会は」と男は思っちゃうんです。だから、矛盾を体験している方が意志決定する場に入らないと、そういう視点が入らないんですよね。だから、川崎さんがおっしゃったことはとても重要だと思いますね。

【川崎】女性管理職がルールメーカーになったら、夜8時からの定例会議なんて絶対やりませんからね。子育て中のお母さんたちが管理職で入っていたら「え、じゃあSkypeでよくない?」ってなっていくと思うんですよね。「その時間に話し合わなきゃいけないんだったら、これでよくない?」と、新しい発想がどんどん生まれてくるはず。

【田中】そうですね。今までなかったイレギュラーなものがそこに入ってくると、そこで正当だったルールが揺さぶられていくと思いますね。異質なものが入ってくるというのはすごく大事だと思います。

【川崎】育休をとってる男性とか、育休明けの男性とかね。

【田中】まさにそうですよね。

●“女のプロ”川崎貴子ד男性学”田中俊之 対談記事一覧
第1回 結婚を不安視する男、幻想から離れられない女
http://woman.president.jp/articles/-/866
第2回  「結婚はコスパが悪い」という男性が結婚を意識するのはどんなとき?
http://woman.president.jp/articles/-/893
第3回 上司をおだてることは、会社の不利益である
http://woman.president.jp/articles/-/896
第4回 女性たちよ、管理職になれ!
http://woman.president.jp/articles/-/903
第5回 結婚したいのにできない人に必要なこと
http://woman.president.jp/articles/-/925
第6回 「減点法」コミュニケーションの行く先は、破局しかない
http://woman.president.jp/articles/-/926
第7回 男はつらいよ~男は「競争」、女は「協調」
http://woman.president.jp/articles/-/927
最終回 「夫が家事を主体的にやってくれない!」となぜ怒ってはいけないのか
http://woman.president.jp/articles/-/928
川崎貴子
1997年に女性に特化した人材コンサルティング会社、株式会社ジョヤンテを設立。経営者歴18年。女性の裏と表を知り尽くし、人生相談にのりフォローしてきた女性は1万人以上。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚、そして8歳年下のダンサーと2008年に再婚を経験、「女のプロ」の異名を取る。9歳と2歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(KKベストセラーズ)など。
田中俊之
武蔵大学社会学部助教、博士(社会学)。1975年生まれ。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。2014年度武蔵大学学生授業アンケートによる授業評価ナンバー1教員。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめ、多様な生き方を可能にする社会を提言する論客としてメディアでも活躍中。著書に、『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)など。

構成=すずまり(鈴木麻里子)