泥水を飲める人

加島氏は、いま日本企業が渇望しているリーダー候補像には、ある共通点があるという。それは「苦労を買って出ることができ、リスクを取ってチャレンジする人」、いわば“泥水を飲める人”だ。日本の常識が通用しない海外で、グローバル企業と渡り合わなければならないのだから、いまの仕事で成果を挙げているというだけでは通用しないというのもうなずける。

ただ、そうなると、本部が把握している目標管理シートや、階層別研修でたまに本社を訪れるといった程度の情報だけでは人物をはかることができない。部長クラス以上ならいざ知らず、毎年100人を超える新入社員が入社するような会社では、課長以下の若い社員の中に、どんなポテンシャルを持った人材が、どこにいるのかわからないというのが実状だ。そこで若い社員と日々直に接している職場の責任者クラスに有望な人材を推薦してもらい、それらを集めて選抜研修を実施し、将来のリーダー・経営者候補を見極めようというわけだ。人材発掘の可能性をより高めるため、自己申告で立候補させ、論文・面接などの審査を経て候補を選ぶ方法を併用している会社もある。

「現場から選ばれやすい人は、目上の人と話しているときに『こいつは視点が事業レベル、経営レベルで話しているな』という“視点の高さ”を感じさせる人。それは上司なら常々感じているはず。また、ふだん話をしていて、スムーズにメッセージが伝わってきやすい人は、周囲の評価や期待値も高くなります。意外なことに、周囲から好かれるタイプの人ばかりでなく、けっこう尖っていて、敵も割と多いような人も選ばれます」(加島氏)