世にまかり通る保険の常識の数々。しかし、それを信じると思わぬ落とし穴に入り込むことに……。そんな実は「非常識」なことを保険のプロたちがつまびらかにする。
火災保険
火災保険といえば、補償内容も保険料もほぼ同じで、違うのは損害保険会社の名前くらい――。そんなイメージを抱いている人がいまだに多い。
ところが、なごみFP事務所の代表でファイナンシャル・プランナー(FP)の竹下さくらさんは、「1998年に保険料率が自由化されてから、損保の横並び体制は崩れ、火災保険のラインアップもバリエーションに富んできました」と説明する。具体的には、各損保の商品によって、補償内容がかなり異なっているという。
戸建て住宅の火災保険で東京海上日動火災保険は火災、落雷、破裂、爆発のほか、風災、水災や盗難などをセットで補償するが、AIUだと火災、落雷、破裂、爆発が必須で、風災や水災などの他の補償は選択できる。この点について平野FP事務所代表でFPの平野敦之さんはこう評価する。
「高台の住宅であれば、浸水の被害に遭う可能性はほぼゼロでしょう。でも、水災がセットになると、その分だけ余計な保険料を支払わなくてはいけません。しかし、補償を選択できると、合理的な補償内容を組めるうえに、その分保険料も安くなります。ただし、風災・雪災・ひょう災はワンセットになっていて、沖縄の人が台風に備えて風災も選択すると、雪国の人に必要な雪災まで付保されてしまいます」
また、損保の約款には、少額の被害では保険金を支払わない免責条項もあって、平野さんは「住宅総合保険では、20万円未満の風災・雪災・ひょう災は免責でしたが、すべての補償に免責額をゼロや1万円、5万円など選択できる商品も増えてきました」という。
保険金を支払う際の算定方式も、選べるようになった。通常の損害保険では、保険対象の実際の損害額を填補する「実損払い」が基本で、損害額は時価で算定するのが一般的だ。しかし、住宅の場合、築年数が経っていると時価も下がるので、保険金が下りても建て替えができないケースが出てくる。そこで、新築にかかる金額(再調達価額)がもらえる「新価実損払い」方式の商品が、いまでは中心になっている。
損保などでの勤務を経て、1998年にファイナンシャル・プランナーとして独立。
1998年に独立。生命保険から損害保険まで幅広くカバーする保険のプロとして活躍。