課題を持って先延ばしする効果

プロジェクトを動かすとき、営業をするとき……。あらゆる場面で、発想力は重要になる。新しいアイデアを生み出し、差別化をはかることで、競合から一歩抜きんでることができるだろう。ある人は締切日前までに、用意周到に出来る限りの材料をそろえて企画に取り組み、ある人はギリギリになって徹夜して仕上げるかもしれない。その時間の使い方には大きく分けて、次の3パターンがみられる。

(1)前倒して、すべてを早めに終わらせる。
(2)前倒して考えることに時間を割き、仕上げを先延ばしする。
(3)ギリギリに着手して、急いで仕上げる。

さて、あなたはどのタイプだろうか。子どもの頃の夏休みの宿題なら、(3)が多いかもしれない。ときに1日目にすべてを終わらせる(1)タイプも聞かれる。これらのタイプにはそれぞれ発想に違いが生まれてくるという。

組織心理学者アダム・グラントの実験で、アイデアの独創性と有用性を評価してもらうものがある。方法は、「新事業のアイデアを生み出す」という課題を与え、そのアイデアを第三者に見てもらう。一部の参加者にはすぐに課題に取り組んでもらい、一部は、作業を先に延ばして5分~10分間ゲームをしてから課題に取り組む。さて、すぐに取り組んだ人たちと、遊んだ人のどちらがよりユニークな発想ができただろうか。

結果は、適度に課題を先延ばしにした人たちが、すぐに取り掛かった人たちよりも16%も発想が豊かだった。ただし、この結果にゲームの面白さは影響ないという。なぜなら、ゲームをした後で課題を告げられたときには、発想が豊かにならなかったからだ。

発想に影響があったのは、「こういう課題に取り組む」と教えてもらってから、先延ばしにしたときだけ。前倒して仕上げることで心にはゆとりが生まれるが、想像力を刺激するには時間が足りない。逆に、あまりにギリギリでは間に合うかパニック状態になるかもしれない。つまり、(2)の早目に着手して、仕上げを先延ばす、が発想には効果的だというわけだ。

では、先延ばしによって、どんな風に思考が変わるのだろうか。