「『人工知能』で生活はどう変わるのか」(http://president.jp/articles/-/18405)でも取り上げたグーグルカーは、公道での自動運転時の事故は一度も起こしていない。グーグルだけではなく、世界各国の自動車メーカーでも、自動運転の研究が進められている。
トヨタ自動車は2020年頃を目標に、高速道路の自動運転を目指すことを発表。また、今年1月には、米・シリコンバレーに人工知能を研究する新会社を設立した。日産自動車は、渋滞時などに半自動運転になる新型車の販売を今年予定している。
そのほか、GM、ベンツやボルボ、アウディなど、各社がしのぎを削り、自動運転車の実用化に向けて開発を続けている状態だ。
では旅客機の状況はどうだろう。既に行われている上空での自動操縦だけでなく、離着陸も含めた自動操縦は近い未来に行われる予定なのだろうか。私たち編集部は霧が多く、他空港と比べ離着陸が困難と言われるサンフランシスコ国際空港への取材を試み、同空港広報担当のダグ・イェークル氏に話を伺うことができた。
「おっしゃる通り、サンフランシスコの空は霧もよく出ますし、曇ることも多い。そのために自動操縦着陸機能が他の空港においてより活用されることが多いのは確かです。
しかし離着陸においてサンフランシスコ国際空港だけ何か特別な規則や機能があるわけではなく、離着陸については手動マニュアル操縦が主で、水平飛行に入ってからは自動操縦という点は、サンフランシスコでも変わりません。最後はよく訓練された人間のパイロットが活躍する場があるのは全世界のあらゆる国際空港と同じなのです」
自動操縦機能の安全性についてはどこまで担保されているのか?
「私たち自身の経験から言えることとして、2013年に発生したアシアナ航空(注:現地7月6日に発生・乗客3名が死亡)の事故についての調査報告が出ています。
米国国家安全運輸委員会(NTSB)は同航空のパイロットたちが自動操縦に頼りすぎ、機能の意味をよく理解しないまま使っていたことが原因という結論を出しました。この一件から明らかになったのは、これからもいざというときに訓練された人間の知性がパイロットとして必要となるということです」
米・グーグル社の次世代技術の開発を行う機関、「グーグルX(エックス)」の創設者であるセバスチャン・スラン氏が言うように、離着陸も完全自動化される日は来るか? 「個人的見解ですが、先ほどあげた事故の教訓とは自動化された機能に頼りすぎると悲惨な結果を招くことになるということです。
現時点の航空業界において、人工知能は人間と同じレベルには達していません。いつか人工知能が人間に追いつき、追い越すときは来るかもしれませんが、それは今ではありません。これから私たちが追求していくべきは自動操縦と手動操縦の正しい比率とはどのようなものかであり、完全自動操縦そのものではないと思います。
現時点で自動操縦機能は人間の知性まで達していませんし、緊急事態・現状把握・問題解決能力においてはまだ人間のパイロットのほうが上なのです」