短期間で立候補者の良さを知ってもらえるか
参院選真っ只中。連日、選挙カーは候補者の名前を連呼し、駅前では立ち合い演説が繰り広げられている。帰宅すれば、ポストには政党や立候補者からのハガキが届いていたり、自宅でのんびりテレビを見ていると「○○選挙事務所です。どうぞ、よろしくお願いします」と、電話がかかってくる。そんな経験をお持ちの方は、少なくないはずだ。
真山仁氏の小説『当確師』(中央公論新社)は、ある地方の市長選を舞台に、当選率99%を約束する敏腕選挙コンサルタントが縦横無尽に“暴れまわり”、絶対的に優位といわれていた現職市長を引きずり下ろす選挙戦を描いたもの。さまざまな情報戦や盗聴や恫喝など、痛快フィクションと思いきや、実は現実も似たり寄ったり。では実際に、「選挙」はどのように行われているのか。
選挙は、衆参の国会議員を決める国政選挙と、都道府県の知事、区市町村の長といった首長、さらに都道府県や区市町村の地方議員を選ぶものと、多岐にわたる。日程が決められ、立候補の届け出を受け付けて、各立候補者が出揃ってスタートするわけだが、衆参の国政選挙は「公示」、地方自治体の首長や地方議員の選挙および国政の補欠選挙や再選挙は「告示」という。そこから投開票前日までを「選挙運動期間」と呼ぶ。町村議会選挙および町村長選挙は5日間と最も短く、参議院選挙および知事選挙が17日間と一番長い。この期間で、有権者に立候補者の名前を覚えてもらい、投票してもらわなければ、当選はあり得ないのだ。
では、その選挙の陰でどのような人たちが動いているのか。『当確師』に登場する選挙コンサルタントをはじめ、さまざまな人たちが一人の立候補者を支えている。ある選挙スタッフはこう語る。
「百貨店やネットなどのバーゲンセールに置き換えてもらうと分かりやすい。一定の期間で、1位を争う戦いなんです。バーゲンは消費者にいかにお店に足を運んでもらうか、またはネットショップを覗いてもらうかですが、私たちは立候補者の良さを有権者に知ってもらい、いかに投票行動まで結びつけるかが、勝負です」
立候補者はイチオシ商品――。確かに、そう考えると分かりやすい。ビジネス的視点を加味しながら、選挙の裏側をお伝えしよう。