いかに目立つ場所に数多くポスターを貼れるか

選挙戦が始まると、各候補者は選挙事務所を構える。ターミナル駅の前の空オフィスだったり、アーケード街の空き店舗だったり、さまざまだ。重要なのは、目立つ場所、人の流れが多い場所である。

「候補者の名前を書いたのぼりやポスターを貼り、目立つことが重要です。また、支援者が訪問しやすいことも重要です。人の出入りが多ければ、一般の有権者に『あの候補者は人気がある』『一生懸命、選挙を戦っている』という印象を与えやすいからです」(ある衆院議員秘書)

任期満了に伴う選挙は、大まかな日程が読みやすいため、選挙事務所の物件探しは、数カ月前から行われる。現職の場合、秘書や支援者が物色して押さえておくことが多い。一方、急に出馬を決めた新人候補は、なかなかそうはいかず、大通りから一本脇に入った路地の一角に構えることも、よくある。老舗の人気商品と初出店の“新参者”では、スタートラインから違いがあるものなのである。

続けて、認知させるために、どのような手段を用いるのか。

「ポスター、街宣、駅頭。この3つが大切です」

こう語るのは、選挙プランナーだ。ポスターは候補者の顔と名前を知ってもらうため、絶対不可欠のツール。街宣車で候補者の名前を連呼するのもそのためだ。そして駅頭での演説は、いわば“デパ地下の試食”だと、プランナーは語る。

「実際に、候補者がどのような声で、どのような政策を語るのか。有権者は実際に見て聞くことによって、大きな判断材料になります」

しかし、“いろいろ試食する”有権者は少ない。だから「ポスターをどれだけ多く貼れるかが、第一の勝負ポイント」だと、元衆院議員秘書は語る。

「ある総選挙の時、無所属議員の手伝いとして公示日に事務所に入りました。最初にやったのが、ポスター作戦です」

ポスターは各区市町村の選挙管理委員会が定めた掲示板に貼るほか、それぞれの陣営が相手の承諾を取って各家庭の塀や商店の脇など、さまざまなところに貼っていく。この秘書の場合、弁当屋に目をつけた。

「事務所近所の弁当屋を調べ、3カ所にお願いに行きました。A店には毎日朝8時に30食の弁当をお願いする代わり、お店の脇にポスターを貼らせてほしいって。B店にはお昼、C店には夜という具合。こうした一つ一つの積み重ねでポスターを貼れる場所を増やし、大政党を相手に小選挙区で勝つことが出来ました」

目立つ場所に数多くポスターを貼る。考えてみれば、存在自体を知らなければ、消費者は試食になかなか手を出さない。候補者が出ているかどうか、最初の取っ掛かりとして、ポスターは非常に重要なのである。

【関連記事】
あなたの外見は、話の説得力を高めていますか?
これが当選する選挙ポスターづくり
18歳選挙権で日本の民主主義がアブナイ
誰も知らない選挙のウラ側、教えます
公約不要、選挙は「顔と声と身長」で当落確定済