社内が猫の手も借りたいほどてんてこ舞いの状況のときに、休暇を申し出るのは気が引ける。しかし、どうしても休まなければならない事情が生じたら、どうすればいいのか。
「突然、上司の目の前に立ち『休ませてください』と申し出れば、上司にも心の準備がないので『なにを言っているんだ! この忙しいときに、無理、無理』と却下されてしまいます。しかも、一度却下されると、『やっぱり、休みをほしいのですが……』などと2回目のお願いをするのは、もっと言いづらくなります」(NHKでのキャスター歴17年、「正統派スピーチ」指導の第一人者として活躍する矢野香氏)
そこで考えたいのが、メールで第1の矢を放つ方法だ。
「『休暇のご相談をしたいので、お時間をいただけますか?』といった程度の予告と日時の約束をします。ただし、上司が出張続きだったり、会議続きだったりするとメールを読み落とされる可能性もあるので、心理的なものも含め、相手の状況を想像したうえで実行することが大切です」(矢野氏)
さらに注意したいのが、メールの後で、実際に対面して話をする場合の言葉遣いだ。
「“言いがたい”状況ではどうしても、『恐縮』『僭越』『左様』など漢字の熟語、すなわち漢語を使いがちになるものです。しかし、漢語を使うということは、言葉の武装であり、相手に警戒感を持たれる可能性が高くなります。また、『せっかく対面で会っているのによそよそしいヤツ』と思われかねません。さらに、漢語はメールの文字で見る分には意味がわかりやすくていいのですが、耳で聞いた場合には脳で変換する手間がかかり、相手にそれだけストレスをかけ、不機嫌にさせる危険性もはらんでいます。これでは、色よい返事は期待できません」(矢野氏)
矢野氏によれば、文末だけでも“漢語”を“ひらがな”にすれば、堅苦しさから解放されるという。
「『懸念しています』は『心配しています』、『まことに遺憾です』は『期待に添うことができなくて、申し訳なさでいっぱいです』といった形で、表現をわずかに変えるだけでも、相手との距離感をぐっと縮めることができます」(矢野氏)