今年4月、損害保険会社4大手の事業会社社長が一斉に交代。国内約8兆円の巨大市場を各社経営トップはどう捉えているか。どういった差別化戦略をとり、どのように人材を育成するのか。話を聞いた。

――損保ジャパン日本興亜 西澤敬二社長「AIでコールセンターを代行」

シリコンバレーに研究拠点を開設

──損保業界の現状についてどのように捉えているか。
損保ジャパン日本興亜社長 西澤敬二氏

【西澤】我々の業界で、環境の変化としては人口動態や気候変動がある。日本の人口は50年後には8000万人に減少するといわれているが、50年の間に準備することができる。グローバルトップのアリアンツはドイツ企業だが、ドイツの人口は8100万人だ。それでも世界最大級の保険会社になっているわけだから、悲観する必要はない。自然災害についても保険の保険にあたる再保険の手当てなど、事前の備えはある程度できており、経営リスクとしてさほど深刻には捉えていない。むしろ、すぐ対応を求められるのが、自動運転、IoT、ビッグデータなどテクノロジーの進化がもたらす急激な変化だ。この動きに対応するため、4月にシリコンバレーに研究拠点「SOMPO Digital Lab Silicon Valley」を設置した。海外の保険大手はITへの投資を強めている。我々も遅れることなく、ITのプロを顧問などに招聘し、デジタル技術を我々のビジネスに生かせるよう研究していく。

──どのような研究をしていくか。

【西澤】(1)生産性の向上、(2)お客様接点の高度化、(3)新たな価値の創造の3つを掲げている。(1)については、AI(人工知能)などのツールを活用した業務プロセスの効率化。すでにコールセンターで実験が始まっている。お客様の声を音声認識し、キーワードを拾い上げて該当するFAQを5つ程度自動的に表示する。スタッフは、それに基づいて対応する。これがうまくいけば、従来必要だった初期教育やアドバイザーの配置などのコストを削減できる。(2)については、代理店、コールセンター、Webなど、連携ができていなかったチャネルを横断して「オムニチャネル」化し、情報を連携させる。(3)では、テレマティクス(通信と情報工学を融合する技術)を活用した商品をすでに発売しているが、さらに新たなビジネスモデルにチャレンジしていかなければいけない。今後の競合はどこになるかまだ見えないが、お客様の立場に立って徹底的に取り組んでいく。