>>新さんからのアドバイス

英語には職を転々とする人を指す「ジョブホッパー」という言葉がありますが、これは揶揄の響きを含んだ言い回しです。一つのことを長く続けられない人は尊敬されないのでしょう。

私はいくつかの外資系企業で仕事をしてきましたが、50代前半までは一つの会社に最低10年勤めることを自分に課してきました。腰を落ち着けて課題に向き合い、自分を磨くには、ある程度の継続した時間が必要だと考えたからです。50代半ばからは事業立ち上げや企業再生に携わってきましたが、そこで比較的短期間で成果が出せたのも、一つ一つの会社でじっくり腰を据えて仕事に取り組んだ体験がアウトプットにつながったからかもしれません。

これまで多くの人を見てきて、仕事でも趣味やプライベートでも、最後に花を咲かせる人に共通しているのは「諦めない」という姿勢です。故・松下幸之助さんに「成功の秘訣は成功するまで続けること」という名言がありますが、諦めないことが究極の成功哲学であることは間違いないでしょう。

一つのことを5000時間続ければセミプロになれるし、もっと頑張って1万時間続ければプロになれるといいます。いま45歳の人が白紙の状態から何かを始めたとしても、1日1時間ずつ練習すれば60歳を迎える前にセミプロになれる。セミプロとは、会社の肩書がなくても、自分の腕や名前で稼げる手だてが身についているということです。

英語の学習でも「5000語を覚えましょう」といわれると無理と思ってしまいますが、小分けにして1日10語覚えることを毎日続ければ、じつはわずか1年半たらずで達成できる目標です。結果を信じて努力を続ければ実力は必ずついてくるのに、途中で諦めてしまうのには実力アップを実感できないという理由もあるのではないでしょうか。

努力によって実力がついても、それを自覚できるまでにはタイムラグがあります。その間はちょうど階段の踊り場にいるようなもので、諦めずに続けていけばやがて階段を上る実感をもてる瞬間が必ずやってきます。

内藤 忍●マネックス・ユニバーシティ社長

1964年生まれ。東京大学卒業後、住友信託銀行入行。米国MITでMBA取得。シュローダー投信投資顧問を経て、99年マネックス証券入社。2004年マネックス・オルタナティブ・インベストメンツを設立し、05年11月より現職。資産運用に関する著書多数。
田島弓子●ブラマンテ代表取締役

1967年生まれ。成蹊大学卒業。IT業界専門の展示会主催会社などを経てマイクロソフト日本法人に転職。在籍中、個人、グループでアワードを2度受賞。2007年キャリア、コミュニケーションの支援を行うブラマンテを設立。著書に『ワークライフ“アンバランス”の仕事力』。
新 将命●国際ビジネスブレイン社長

1936年生まれ。早稲田大学卒業。シェル石油を経て、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどのエクセレントカンパニーにて、社長、副社長を歴任。2003年より住友商事など数社のアドバイザリーボードを務める。近著に『リーダーの教科書』。
(石田純子=構成 相澤 正=撮影)