>>齋藤さんからのアドバイス

人との付き合いはけっきょく、縁があるかないかに尽きると思います。結婚が最たる例ですが、条件を熟考したからといって最高の相手が見つかるわけではないでしょう。縁がある人とはその日のうちに次に会う日程を決めたり、何かの機会に久しぶりに会おうという流れに自然となっていくものです。また自分の時間やエネルギーには限界があるので、その範囲で付き合う人や頻度は決まっていきますし、仕事につながるかもしれないと思って気乗りのしない相手と夜や休日の時間に会っても、しょせんは続かないのではないでしょうか。

相手が自分にとって利用価値があるかどうかも、付き合う人を選ぶ基準にはなりません。仕事関係の相手ならオフィスアワーに会って仕事を通じて信用を得ていくのが基本ですし、仕事の内容によっては会う機会を設けなくても、結果を出し合ってよい関係を築いていけるケースもあります。私は仕事の相手と食事に行くことはほとんどありませんが、不都合はまったく感じません。仕事の相手とは仕事で付き合う、一緒にいる時間そのものが目的となるような人や会いたい人とは会う機会をつくる。どっちつかずのグレーゾーンはありません。

じつはこの考え方のエッセンスはバスケット選手のマイケル・ジョーダンに学んだものです。彼がシカゴ・ブルズにいたころ、傍目にも体調が悪く、チームメートのスコッティ・ピッペンがマイケルの肩を抱いて退場したことがありました。ところが彼らは、プライベートではほとんど顔を合わせないという。バスケットボールのようにチームワークと暗黙知が必要なプロ集団であっても、のべつまくなしに一緒にいることがよい関係を生むのではないと気づかされました。

いまの時代、人々は必要以上に孤独を恐れているように見えます。私はむしろ孤独こそが力を生むと思いますし、プロフェッショナル同士がある程度の距離感をもってつながっていることで、いい仕事ができていくケースも多いと考えます。もちろんコミュニケーションが大切な仕事もありますが、必要なコミュニケーションは仕事の中で取り合うのがプロであって、飲みに行かないとテンションが上がらない、感覚が共有できない相手であれば、思い切って関係を見直してみるのも一案です。