店舗デザイン「丸投げ」の罠
映画は総合芸術だと言われることがありますが、飲食店もさまざまな要素が入りまじって総合的に評価されるものです。店がお客に提供しているものは大きくわけて3つあります。それは「飲食物」「サービス」そして「環境」です。おいしさやインパクトが大切な「飲食物」、ホスピタリティや的確さが求められる「サービス」、そして居心地の良さと清潔さが肝要な「環境」。これらがバランスよく融合することで魅力的な飲食店が出来上がります。
その中で何がより重要なのかは業態によって異なります。例えばラーメン店であれば、多くの場合、商品自体のおいしさが最優先されるでしょう。多少ぶっきらぼうでも、あるいは店内が清潔さに欠けていたとしても、肝心のラーメンさえおいしければ許されてしまうことも多いものです。一方、高級料亭であれば、3要素がすべて求められるでしょうが、女将やスタッフのおもてなし(サービス)にこそ、お客は価値を感じている可能性が高いと言えます。
そんな中、今回は「環境」について、主に店側の視点から考えてみます。環境の中でも清潔さは飲食店にとって大前提として、ここでは「店舗空間の良し悪し」について見ていきます。いわゆる「店舗設計」や「店舗デザイン」と呼ばれる業務は専門家以外にはとっつきにくいことが多いので、初めて飲食店を開業する人は外部に丸投げしがちです。しかし、これはとてもリスキーなことなのです。