設計はまず「ロジック」から
私が知る限り、実際にこんなケースがありました。
・お客とスタッフの動線(店内での人の動き)が交錯しており、思わずぶつかりそうで危なっかしい。
・クローズドキッチン(調理の様子が見えない閉鎖型厨房)にしたが、音や匂い、活気が客席に届かず、魅力が半減。結局、壁を一部壊してオープンキッチンに変更した。
・繁華街にある店舗にもかかわらず、入り口がまったく目立たないため、存在がなかなか気付かれない。
いずれも当初の計画が甘かったために、のちに苦労しているケースです。飲食店の「デザイン」と言うと、どんな家具や照明器具を選ぶか、あるいは壁の色は何色か、ということをすぐに想像するかもしれません。しかし、その前に最優先で詰めるべきは店舗の「機能性」なのです。
どこに厨房を配置すべきか、この面積に対して何席取るべきなのか、厨房から客席へ料理は提供しやすいか、トイレはいくつ必要か、テーブルサイズは何センチ角が望ましいか、スタッフはどこで着替えるのか、冬場にお客はコートをどこに置くのかなどなど、機能面で検討すべき点は数限りなく存在します。
その際には「センス」というよりも、知識や経験に基づく「ロジック」が必要とされます。一流とされる店舗デザイナーは例外なく、ビジネスパーソンとしてのコミュニケーション能力、そして課題を解決する提案力が高いものです。クライアント(店舗オーナー)のニーズをしっかりと引き出して、まずはそれをきちんとクリアする機能性を具現化するのです。彼らは決して「感性だけの人」ではありません。ロジックを積み上げた機能性バツグンのプランをベースにして、その上にきちんと独自のセンスを表現しているのです。