「そうぞう」するビジネスがやりたかった

【田原】シリコンバレーで感化されて日本に戻った。コンサルタントとして働き始めてみて、どうでしたか。

【松本】A.T.カーニーでは、M&Aの企業価値算定や、市場のリサーチ、コスト削減などを担当していました。とくに多かったのがコスト削減の案件。ちょうどリーマンショックがあって、多くの企業は現金を確保する必要に迫られていましたから。ただ、これらの仕事はロジックや合理性が大切で、突き詰めれば誰がやっても同じ答えになります。私は「そうぞう」をしたかったので、ちょっと違うなという思いもありました。

【田原】「そうぞう」って、どっちのそうぞう?

【松本】両方です。イマジネーションもクリエーティブも、どちらも大切です。コンサルも上のほうなら新しいものをつくっていけるのでしょうが、下っ端の仕事は代替可能な世界なので、合わないなと思って1年半で辞めてしまいました。

【田原】コンサルをお辞めになってラクスルを立ち上げるわけですが、なぜ印刷業界に着目したのですか。

【松本】コスト削減の仕事をする中で、あることに気づきました。コスト削減の対象になる間接費には物流費やシステム開発費、広告宣伝費などさまざまなものがありますが、なかでも削減率が高かったのが印刷費です。つまり印刷業界は非効率な業界で、改善の余地が大きいということ。起業するならここだろうと。