対日政策は、真意不明vs無関心
不動産王、ドナルド・トランプ氏が共和党の指名獲得を確実にした。11月の米大統領選で民主党の候補者指名が有力視されるヒラリー・クリントン前国務長官との直接対決が実現する見通しだ。世論調査で両者の支持はほぼ拮抗しており、大接戦になる可能性もある。日本政府はどちらが次期大統領になっても対応できるよう検討に入っているが、その舞台裏には憂鬱感がつきまとっている。
数々の刺激的な発言から「暴言王」と称されるトランプ氏。すでに世界各国から要注意人物と見なされているが、次期米大統領に就任すれば、もっともその影響を受けるのは日本だ。トランプ氏は在日米軍撤退の可能性に言及し、日米安全保障条約を「片務的だ」として安保条約改定も求めている。ある外務省幹部は「半分はブラフにしても、危険人物であることに変わりはない」と警戒心を隠さない。
トランプ氏の「米国第一主義」の中で日米同盟関係が修正されるのは必至で、日本側には新たな負担が求められることになる。政府・与党内は米大統領選への関心が日増しに高まっており、5月6日にワシントンで開かれたシンポジウムでは「トランプ警戒論」が広がった。石破茂地方創生担当相は「有力候補が唱える同盟関係の変容には日本で懸念が広がっている」と指摘。佐々江賢一郎駐米大使は「米国のことだけでなく、グローバルな立場を考えてもらいたい」と注文をつけた。
在日米軍が撤退すれば、アジア太平洋地域のパワーバランスは一気に変わる。安倍晋三首相は「次の米大統領が誰にせよ、日米同盟は外交の基軸だ」と評するにとどめるが、「自衛力の増強」が欠かせない状況となる可能性もある。自民党の防衛相経験者は「大統領選後は、抜本的な見直しが必要かもしれない」と危機感をあらわにする。