──小さな奇跡とは。

うまくいった仕事を振り返ってみると、「あの打ち合わせの5分が決め手だった」と気づくことがあります。それが「小さな奇跡」です。物事が決まっていく過程にはいろんな奇跡的要因が重なっています。どんな会社もプロジェクトも商品も「その場にどんな人がいて何を言ったか」の集積でできあがっているのです。

──「小さな奇跡」を起こすにはどうすればいいですか。

「その場」を包む空気はとても重要です。打ち合わせ場所の環境は決定に何らかの影響を与えていると思います。たとえば、恋人に告白するさい、感じのいいレストランを予約したりするでしょう。それは感覚的にその場にふさわしく、相手や用事に合わせて選ぶからですよね。ビジネスシーンでは、皆さん、そういったことはあまり考えないかもしれないけれど、会議や打ち合わせも同じ。人間ですから環境の影響を受けるはずなんですよ。

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こんな“打ち合わせ”では結果は出ない

まず、その日参加する人数と話し合う予定の内容に合った場所を選びたいですね。少人数なのにだだっ広い部屋、逆に大人数なのにぎゅうぎゅう詰めの部屋も居心地が悪い。音楽や映像が鍵となるプロジェクトの打ち合わせをするのに、スマートフォンでサンプルを観るのもダメ。小さな画面で観た感覚で重要な判断をされては困ります。ちゃんとしたスピーカーや大画面で確認するべきです。

社外での打ち合わせなら、僕は可能な限り、あらかじめ打ち合わせ場所を自分の目で確認させてもらいます。合わないと思ったら変更の相談をさせていただくし、変更できない場合はその部屋で最大のパフォーマンスを出せるように自分なりの準備をしていきます。さらに、5分前に到着して挨拶などのコミュニケーションも済ませるようにします。

また、僕の事務所での打ち合わせなら、寒い日には温かいお茶をお出しし、途中で気分転換に別の飲み物に変えます。器や茶葉にも気を使い、季節感を出す。もちろん、大人数の打ち合わせでそこまでしたら、かえって煩わしい。そういうときは手軽なペットボトルを配ってもいいと思う。ケースバイケースで考えるのです。また、プロジェクトや相手先によって服装のトーンを合わせるようにしています。

席順にも気を配りたい。向き合うのがいいか、あえてミックスしたほうがいいか。キーパーソンがシャイな性格なら、真ん中はやめて少し横の席を用意。立場が違ったり、ソリが合わなかったりする人同士は離す。そういった小さな気遣いの積み重ねがその場の空気を決めるのです。関わる人の立場、経験、スキルや性格などを考慮して、自然とスムーズに心地よく打ち合わせができる空気をつくりたい。

細かい部分まで最善を尽くして、「小さな奇跡」の瞬間が訪れるのを待つんです。打ち合わせで小さな奇跡を起こすために準備することは、大きな奇跡を生む「仕組み」の1つだと思います。

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(中沢明子=構成 相澤 正=撮影)