外国語教育に関する調査、指導助言を行う

三宅義和・イーオン社長

【三宅】自分が本当にわかってないと、他人には教えられないし、きちんと教えようと思えば、自分も納得しなければならない。自分の勉強がそのまま生徒の英語力アップにもなると。

【向後】例えば、高校で扱う文法事項の過去完了について、「過去の一時点よりも前のことだ」と教わりました。ですが、現在から見れば、どの時点でも過去は過去だろうと思いました。ところが、自分で教える側になって、感覚として掴むことが大事だということがわかり、それを生徒に伝えたいという気持ちが少しずつ目覚めていきました。

【三宅】その後、千葉県教育庁に入られ、県全体の英語教育に関わる指導主事を務められました。ただ、一般の人には、指導主事というのが何をする仕事なのか、イメージしづらいと思います。一体、どんな役割なのですか。

【向後】身分は教育委員会の事務局の職員です。学校の教育課程とか学習指導、その他、学校教育全般について、専門的な立場でアドバイスします。一般的には英語の教員だった人が英語の指導主事になることが多いんですけれども、教科以外のことも守備範囲に入ります。教諭時代は、自分の学校の英語教育改善がゴールでしたが、指導主事になると、自治体全体の改善をゴールとしなくてはいけません。その意味では非常に重責だと感じました。

具体的には県内の公立学校を訪問して、先生たちとディスカッションしながら、改善点や目指すべき方向などを話し合います。しかし、そう簡単ではない。 学校からは「それは県の考えでしょう」「国が言っていることですよね」と切り返されることも多く、ずいぶん葛藤もありました。ただ、そういう人たちと一緒に協働していかなければいけないので、毎日が勉強と言っても過言ではありませんでした。

【三宅】さらに、10年度から文科省に移られる。しかも、国立教育政策研究所にも籍を置いて、いずれも「調査官」という肩書きがついていますが、これはどのような仕事ですか。

【向後】文部科学省では、教科調査官という役職に就いています。主に外国語教育に関する調査、それから技術的な指導助言を行う。一方、国立教育政策研究所は、文科省が所管する政策研究機関です。そこでは教育課程調査官を拝命しています。この仕事は、初等・中等教育政策の基礎的な調査研究です。加えて、教育機関や教育関係者に対する指導助言も行います。イメージとしては、国立教育政策研究所で基礎研究をして、その成果を文科省の調査官として施策化し、実行するということなのですが、たぶん、一般の人が聞いても「えっ?」という感じでしょうね(笑)。