給与はキレイな年功カーブを描く

グラフは建設業における企業規模ごとの年齢別・年間賃金(時間外手当て含む)の比較です。

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建設業 企業規模別 年間賃金比較/公共工事設計労務単価 全国全職種平均値の推移

この業種の特徴は製造業同様に、キレイな年功カーブを描いていることです。しかも、企業規模の大・中・小で、明らかな賃金格差を示しています。

大型の公共工事であれば大手ゼネコンが受注し、協力業者である建設会社や工事会社に業務を外注していく。その下請け、一次下請けだけでなく、二次請け、三次請けと、多重の構造ができあがっています。国立競技場やオリンピック施設などでも、受注会社として大手ゼネコンの名前が上りますが、実際に工事するのは下請け業者が中心なのです。ゼネコンでは、完成工事高に対する外注費の割合が60%以上を占める会社も多く、財務面から見て、重層下請け構造であることを物語っています。

一方、公共工事費の積算に用いるため、国土交通省と農林水産省が決定する公共工事設計労務単価。表のように、2012年頃まで一貫して単価を引き下げてきたことが、現場労働者へのシワ寄せとなって現れ、若者の建設業界離れを招いてきました。

建設業界における人手不足の深刻さは、「震災復興のプランはできたけど、いつになっても被災者の住宅が完成しない」「東京にオリンピックは誘致できたけど、競技会場建設が計画通り進まない」といった問題につながっています。

これに対して、国も本腰を入れて取り組みはじめています。2013年度から公共工事設計労務単価を急速に引き上げ、2016年の改定では、2012年度に比較すると35%もの大幅改善となっています。また新規学卒者の建設業への就職も、幾分底打ちの兆しをみせてはいます。しかしながら、先述した若年定着率の悪さに加え、全産業的な人手不足も重なり、思うように効果が現われていません。

たいていの国なら外国からの移民労働者に頼るところでしょうが、わが国の民意からはそれもハードルが高い選択肢です。

今年開催のリオ・デジャネイロ五輪の競技会場建設が遅れているというニュースを見て、「やっぱりブラジル人は……」なんて他人事のように笑っていると、4年後に笑われるのは日本かもしれないのです。

東京の救いは神奈川や埼玉、千葉など首都圏の近隣県に協力を仰げば、最悪の場合でも何とか会場確保できそうなことでしょうか。実際に、サッカーやゴルフ競技では他県の会場を使用するようですし。ホテル不足の問題も考えあわせると、むしろその方がいいのではないかと思いますが。

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