「礼儀、礼節とかマナーの話です。友人宅に手ぶらで行くか、手土産の一つも持っていくかということとまったく同じ次元の話」(前出・内科医)
「金よこせ」と患者を人質に取るのではなく、何かを頼もうと思ったら、気持ちを入れたものを渡すものだということ。円滑な人間関係をつくるためであり、挨拶や礼儀、礼節の範疇だ……と繰り返した。
2カ月待ちのところを2週間にしてもらう
都市伝説のように囁かれるセレブリティの扱いも「挨拶」の範疇か。ある国会議員の秘書が語る。
「総理大臣や派閥領袖クラスが病気になったら最優先で対応してもらえる。病院には疾病の軽重とは別の論理で動いている部分があります」
厚生労働省が予算や人事に強い影響を及ぼす国立病院では、疾病の軽重、緊急性とは別に“要人”“口利き”が日常的に幅を利かせているという。
「例えば、有名な外科医のがん手術を、通常2カ月待ちのところを2週間にしてもらうことも可能。その際に『つけ届け』を渡しますが、受け取るか否かは個々の医師の判断次第」
この「口利き」は、厚生労働関係議員の数少ない利権の一つだというが、では、セレブではない一般人だと、金額がショボければ順番を後回しにされたり、ふて腐れた医師に手を抜かれたりするのだろうか?
「そこが大きな誤解なんです。保険診療ですから、あってもなくても、あるいは金額が多くても少なくても、医療行為としてはまったくおんなじことをやりますよ。『出さないから採血しない、薬はやらない』ということはないし、未熟な若手の練習台にするようなことは、日本においては、たぶんない」(同)
ただ、人と人の関わりである以上、微妙な影響は避けられないようだ。
「逆の立場だったらどうか考えてください。(心づけを)出した人と、何も出さない人とで同等に扱うか。例えば、治療の予約が一杯一杯の日に、頼まれてもう1人追加するかどうか。忙しいときにいきなりアポなしで来た家族と話をするか。本来のルールからすればやらなくていいこと。でも、感謝の気持ちを示されれば善意で融通を利かせてあげようと思いますが、それをしない人はノー」(同)
金額の多寡より渡すか、渡さないか。治療じたいに影響はないが、多少の差は覚悟すべきであるようだ。
この内科医によれば、所属する科によって貰える“確率”が違うとか。
「外科はやはり、一発の手術に対して現金を手渡される率は高い」