慢性の病気で何年も通院する患者だと、いきなり手渡す機会は少ない半面、長く付き合ううちに、年末にビール券や商品券が届いたり、子供の入学祝いをいただいたりと、次第にごく自然な人付き合いになるという。

「語弊があるけど、社会的にしっかりした立場にある人なら、必ずといっていいほど『ありがとうございました』と言っておいていく。一見してダメだとわかるサラリーマンは何もしない。金持ちで、個室でドーンと居座っていても、言葉遣いが横柄だったりきちんとしていない人も払わない。逆に『頼むよ!』と押し付けてくる人もいるけど」(前出・内科医)

では、その金額に「相場」はあるのか。前出の内科医の経験では「ピンキリ」だとか。著名人や芸能人、特に芸歴の長い著名俳優が手術の際に持参したのは30万円だったという。

「外科手術だともっと金額は上。トップクラスの外科医がそういう人の頭や心臓を切っていれば、おそらく3ケタいってると思う。医師が名を上げると“単価”が上がるのは、経済力のある患者が来るようになるから」

病気の種類と扱う科によって金額にバラつきがあり、手術が難しそうに“見える”外科はやはり高いという。消化器系や心臓血管外科、脳外科は高い。脳神経外科や神経内科、精神科はそもそも渡される機会が少ない。「外科と同様、手術には不可欠なはずの麻酔科まで持ってくる人はなかなかいない」(同)。

一般人の平均が3万~5万円。時々、少し余裕のある人に当たると10万円。「外科は一般人でも5から10かなあ」。ティッシュでくるんだり、病室の枕の下からお年玉の袋に入れた1000円札数枚を手渡す老人も。年齢が上の人ほど、手渡される率が高い。病院がどの所得層の居住区に立地しているかによっても額は変わってくる。

「そういう文化があるんです。だから受け取らないと怒り出す人もいます。金額は腕のよしあしというより、患者側の経済力次第。払える払えないの境界は微妙ですが、例えば生活保護を受けている人から貰わなくても、何とも思いませんよ」(同)