必死に働く親の姿を子供に見せるだけでいい

親の見栄で分不相応な教育を与えようとすると子供は荒れる<br><strong>弁護士・さわやか福祉財団理事長 堀田 力●</strong>京都大学法学部卒。東京地検特捜部検事としてロッキード事件を担当。退官後は福祉活動にとりくむ。著書『「人間力」の育て方』ほか多数。
親の見栄で分不相応な教育を与えようとすると子供は荒れる
弁護士・さわやか福祉財団理事長 堀田 力
京都大学法学部卒。東京地検特捜部検事としてロッキード事件を担当。退官後は福祉活動にとりくむ。著書『「人間力」の育て方』ほか多数。

もし、経済的な理由で子供に十分な教育を与えてやれないならば、親はどうすればよいか。答えは簡単である。自分のありのままの姿を、子供の前にさらけ出してやればよい。一生懸命働いて生きている親ならば、自分が必死で働いている姿を、子供に見せるだけでいい。そんな親の姿を目の当たりにした子供は、親がこれだけ頑張って働いているのに進学できないのなら、進学以外のルートで人生を切り拓いていこうと決意するはずだ。

そうやって育った子供は、金持ちの親から何の障害もなく潤沢な教育投資を受けて育った子供より、はるかに自立した人間に成長する。なぜなら、人生設計を自らの頭で考えるようになるからだ。

現在の日本は格差社会と呼ばれている。どんなに頑張って働いたところで、職業によっては金銭的に報われない場合もある。そうした仕事に就いている親の姿を知ることは、子供の目を社会に開かせるいいチャンスだ。子供心に格差社会をおかしいと感じとれば、十分な教育を受けられないことに不満を感じるより、社会を変えていこうという方向にエネルギーを振り向けるようになるからだ。

反対に、子供が親に対して不満を持ってしまうのは、親が見栄を張って子供に分不相応な教育を与えようとしている場合である。金がないのに、借金までして私立に入れよう、大学に進学させようとする親がいるが、そういう家庭の多くで子供は荒れる。

なぜか。親が稼ぎの少ないことを恥じているのを、子供は見抜いてしまうからである。子供は親の誤った価値観をそのまま引き継いで、「金が稼げないことは恥ずかしいことなのだ」という認識を持ってしまう。その認識が子供の心を傷つける。社会に出て、学歴が低いことや金がないことを馬鹿にされるのが恐ろしくて、引きこもりになったり、家庭内暴力に走ったりするようになる。