全米で話題の“The Power of Yet”という言葉をご存じだろうか? 人間の潜在能力の可能性を示す言葉として、2014年9月の米TEDで発表されて以来、注目を浴び、ウェブ視聴は250万ビューを超えた。スピーチを行ったスタンフォード大学の心理学教授、キャロル・ドゥエック氏は、パーソナリティ、社会心理学、発達心理学の分野における研究者だ。特に、モチベーションの研究では世界的権威である。
スピーチのもととなった教授の著書である“Mindset :The New Psychology of Success”(邦訳:『「やればできる!」の研究』)は、ビジネス、教育、スポーツに携わる人にとって必読書と言われている。1回の失敗でだめだと思う人、失敗の原因を分析して次へと奮起する人の違いはどこからくるのかを研究し、能力や才能は生まれつきではないことを過去20年間のリサーチから実証している。本来持つ能力を最大限生かし、次へとつなげられる人の成功の秘密をドゥエック教授に聞いた。
「できない」ではなく「まだできることがある」
シカゴの、とある高校の成績にはFという評価はありません。その代わりに“Not Yet”という評価があります。アメリカの学校では当たり前にあるF評価は“Failing Grade”(落第点)という意味。その評価を受けた生徒は「私には欠陥がある」「私は諦めなければならない」と思い込み、持続して勉強しようとするモチベーションを失ってしまいます。一旦、Fという烙印を押されてしまうと、「あなたには将来の希望はない」と言われているようなものです。
スタンフォード大学教授 キャロル・ドゥエック
パーソナリティ、社会心理学、発達心理学における世界的な研究者。達成動機、人間関係、精神保健に関する研究で大きな業績をあげている。
パーソナリティ、社会心理学、発達心理学における世界的な研究者。達成動機、人間関係、精神保健に関する研究で大きな業績をあげている。
しかし、Not Yetという評価は「あなたは学習目標に対して、まだ到達していないだけで、到達するにはさらに努力が必要である。でも目標への軌道には乗っている」という意味です。その評価を受けた生徒には恥じる気持ちはありません。さらに努力したいというモチベーションにつながるのです。
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