政党の枠を超えた人間関係が政治の基本

【塩田】安倍さんは自民党総裁に返り咲き、12年暮れに第2次安倍政権が誕生しました。

【馬場】自民党では、当時、維新という得体の知れない勢力がいるけど、これをきちんとハンドリングできるのは誰かという話になり、安倍さんも菅さんも、われわれとのそれまでの人間関係を活かされたということです。やはり政党の枠を超えた人間関係は政治の基本で、大事だと思います。

【塩田】大阪都構想の住民投票でも、安倍首相や菅氏は止めるほうに回らなかった。

【馬場】そうですね。菅さんは地方議員出身で、日本の統治機構や行政の仕組みを変えなければと、共感していただいていると思います。

【塩田】15年の暮れ、政府と与党は17年4月の消費税率10%実施を前提に、軽減税率の導入を決めました。この問題についてはどういうお考えですか。

【馬場】誰でも税金は安いほうがいいから、軽減税率はウエルカムと言います。ですが、消費税率を上げるとき、税と社会保障の一体改革で当時の自民、公明、民主3党が合意しています。医療、年金、介護、子育てに増税分の消費税収を全部使いますと約束したのに、それが全然、実現していない。その点に不満を持つ国民は多いと思います。軽減税率は否定しませんけど、本来、低所得者対策は直接給付する形でなければ。軽減税率を導入して10%と8%の間の線引きをどうするのか、財源はどこにあるのかという議論では国民は納得できないと思う。現状では、消費税の10%への増税は延期すべきではないかと思いますね。

【塩田】安倍首相が目指している憲法改正についてお尋ねします。憲法問題では、おおさか維新は地方自治の章を大胆に変えることを目指していると思いますが、安倍首相は改憲項目として地方自治や統治機構改革を本気で取り上げる気配はなさそうです。

【馬場】これは大阪都構想を実現することが推進力になると思います。大阪都構想が実現して、大阪の活性化が目に見える形になると、全国もそれを見ていますので、それぞれの地方でどうやったらいいのかを考えるようになる。国は本来、そのサポート役に徹すべきで、憲法改正という根幹の仕掛けが必要になると思います。

【塩田】改憲が具体的な政治課題となった場合、おおさか維新はどう対応しますか。

【馬場】憲法改正にはもともと賛成です。われわれは何を改正するかを問うていく。もしいきなり第9条となれば、それはちょっと違うでしょうという話になると思います。

馬場伸幸(ばば・のぶゆき)
おおさか維新の会幹事長・衆議院議員
1965年1月27日、大阪府堺市生まれ(現在、51歳)。大阪府立鳳高卒。卒業後、3年間、オージーロイヤル(現ロイヤルホスト)でコックを勤め、86年から中山太郎(当時は参議院議員。後に衆議院議員。元外相)の秘書となる。93年に堺市議補選で初当選(自民党)。12年まで6期在任し、11~12年に堺市議会議長。12年12月の総選挙に日本維新の会公認で大阪17区から出馬し、初当選(現在、当選2回)。14年12月から15年9月まで維新の党国会対策委員長、15年12月からおおさか維新の会幹事長。15年10月に「日刊ゲンダイ」が「毎月 300万円の大豪遊…分裂『維新』大阪組の異常なカネ遣い」という見出しで「馬場伸幸衆院議員の金遣いの荒さが大問題」と報じた点について、「まったく事実ではない。当時、松野頼久・維新の党代表が記者会見で全面否定したのに、『日刊ゲンダイ』が再度、記事にしたから、きちんと法的措置を取ることにして訴えた」と話している。
(尾崎三朗=撮影)
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