なぜ予備は不要なのか

企業から業務改善を依頼されたとき、私は最初に個人のロッカーを見せてもらうことにしている。ロッカーの中が整理整頓されていない人は、間違いなく仕事ができない人である。机の引き出しも同じことで、トヨタのある部署では引き出しから必要なモノを10秒で取り出せることが常識である。

引き出しの中を整理するには、逆に、なぜ引き出しの中がぐちゃぐちゃになるのかを考えてみるといい。たいていは、同じものが複数個入っていることが原因である。特に鉛筆、消しゴム、ボールペンといった値段の安い文房具は数が増えがちだ。安いからといってついつい余分に買ってしまい、引き出しの中がぐちゃぐちゃになってしまう。

予備は必要だと主張する人がいるが、同じモノが複数個あると明らかに仕事の効率が落ちる。たとえばボールペンが3本あれば、たいてい使えないものが1本は交じっており、使えるものを探すだけで数秒が無駄になる。引き出しの中に入れるのは、必要なものを1種類1個を原則とすべきなのである。

それを実行するには、トヨタで行われている「姿置き」が有効だ。引き出しのトレーに文房具の絵や名前を書いてしまい、使ったら必ずその場所に戻すようにする。こうすれば、同じモノを複数持つことは絶対になくなる。

引き出しの片づけ

▼悩み3:せっかく整理しても、すぐに整頓が乱れてしまいます

【before】空きスペースを何となく置き場にしている

[診断]整頓が乱れる理由のひとつは、置き場所が決まっていないから。モノを買う前に、決めておかないとこうなる。

▽解決メソッド→姿置き
置き場所に戻されるべきモノの形、名称をラベルなどで表示する方法。使用状態が一目でわかるうえ、ほかのものを収納すると違和感を覚えるようになり、整頓された状態を保てるようになる。

「姿置き」を実践 before⇒after

【after】どこに戻せばよいか、「見よう」としなくても「見える」が大事

【1】置き場を決めるときは、トヨタの「3定」という考え方が役立つ。定位置(モノをどこに置くか)、定品(どんなモノを置くか)、定量(どのくらいモノを置くか)の点から、モノの場所を決めよう。
【2】同じアイテムが複数個あると、たいてい使えないものが交じっていたりする。使えるものを探すだけで数秒が無駄になり、仕事の効率が落ちる。