優秀な女性でも昇進を拒否する現実
管理職になりたくない女性社員が多いと言われています。でも実態はもっと深刻なようです。
外資系製薬会社が2014年200人の女性営業職にアンケート調査を実施しました。「5年後も今の仕事を続けていたいですか」と聞くと、8割の女性が嫌だと答え、管理職になりたいと答えたのは数人しかいなかったそうです。
同社の人事課長はこう言います。
「優秀な女性でも『頼むから昇進させないで。上がるなら辞めます』とまで言う人もいます。今までは休みが取りやすかったが、たくさんの部下を引っ張る立場になると、自分と自分の家族以上に気にしなければならない範囲が一気に増えるので、その責任は負えないということです。自分で勝手に営業は無理、課長は無理だと決めつけている人が多いです」
建設会社も同じです。同社の人事課長は「入社志望の女性の多くは建築設計やデザインをやりたいと言います。でもそうはいかないので建築現場にも配属していますが、夏の暑い時期にヘルメットを被り、汗だくだくになり、化粧も崩れます。それが嫌で『現場はやりたくない、配属先を変えてください。でなければ辞めます』と言う女性もいる。ましてや夜遅くまで働く管理職になりたい女性はほとんどいない」と嘆きます。
その原因は長時間労働です。日本企業には「遅くまで仕事をする人=仕事ができる人」というイメージが残っています。先の製薬会社では40代以降の女性幹部も「独身か、結婚していても子どもがいない人がほとんど」(人事課長)と言います。
事務機器販売会社の女性人事課長も「女性管理職は男性以上に仕事をしているいわゆるスーパーウーマンばかり。部下に対してもすごく怒りますし、真面目な完璧主義者もいます。少しは植木等の爪の垢をせんじて飲んだほうがいいのではと思う女性上司が多い。厳しすぎて皆が萎縮してしまうのも困った問題」と言います。
女性管理職のロールモデルが必要と言われますが、逆に子どももいないで長時間働いている女性上司はモデルどころか「なりたくない」人を増やすことにつながります。男性も含めて今の働き方そのものを変えるしか解決策はなさそうです。
※本連載は書籍『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著)からの抜粋です。