大企業は「落とす理由があるか」目線

【若新】アウトロー採用に参加する若者たちは、実際に会ってみると、劣っているわけじゃありません。ただ、ズレてはいます。従来の就職活動に違和感があって、はみ出した人たちなので、どこか屈折していて、偏りや歪みがある。その歪みを直すのではなく、歪んでいるなりに働ける場所を見つけようというのが活動のポリシーです。メインストリームの人材ビジネスに長年携わってきた青野さんから見て、彼らのはみ出し具合や歪みはどんなものなんでしょう?

【青野】僕としては、許容の範囲内です。むしろ新鮮です。確かに歪みはあるかもしれませんが、そこでしか出会えない人材に出会える。それが大きな魅力だと思います。

【若新】歪んだ、変な人材を、採用したい人事もいると?

【青野】はい、いると思います。

納冨順一(のうとみ・じゅんいち)●特定非営利活動法人キャリア解放区代表理事。大学卒業後1年間のニートの後、テレビ局のADを経て、人材業界へ転職。新卒、中途、障害者など幅広い分野で人材ビジネスを経験。企業、求職者の目線に立ちづらい人材業界のあり方に違和感を持ち、もっと時代にあった本質的なアプローチを追求するために特定非営利活動法人キャリア解放区を設立し、現職。年間500名以上の大学既卒生や中退者と企業を繋ぐ就活アウトロー採用のサービスを企画・運営。
キャリア解放区
http://career-kaihohku.org/

【納富】企業の人事担当者と話すと、アウトロー採用に参加する若者は、良くも悪くも、他の採用サービスでは出会えない層だとよく言われます。

【青野】世の中には、就活ではこんなことを言ってはいけない、こんなことをしてはいけないという「就活とはこうあるべき」というものがありますよね。そこで想定外のことが起きるはずもなく、人事からするとその対応は難しくありません。従来どおりの対応で済むのでラクといえばラクです。採用側としても、ラクな方向を好む傾向があることは否めません。

でも就活において、ただ選考に落ちたくないようカスタマイズされた人が集まると、その人らしさが見えてきません。だから、採用する理由も落とす理由も曖昧になる気がします。彼らの自己PRなどを読んでも、その人のことがなかなか見えてこないですし、1人ひとり会って、本音を引き出す時間もありません。結局は学歴などの分かりやすい指標で落とすことになるわけです。どういう人間であると強く主張することで、否定されたり選考に落ちたりするというリスクを過剰に意識するあまり、特徴がなくなっているのが現状です。

【若新】昔から大企業の評価制度では、「下位25%を落とし続けた結果、一度もD評価を受けなかった人が部長になる」という話があります。A評価を受けた回数ではなく、D評価をどれだけ避けることができたかどうかで出世が決まる。採用面接も同じかもしれませんね。「落とす理由」が特段見当たらないから採用している。

【青野】その点、アウトロー採用で出会う若者たちは、採用する理由も、落とす理由もはっきりします。