ただし、介護保険には「高額介護サービス費」という制度があり、自己負担額の上限が決まっている。一般的な所得(同一世帯内に65歳以上の方が1人の場合は383万円未満、2人以上の場合は合計で520万円未満)の人なら1カ月の上限は3万7200円で、これを超えた分は払い戻しが受けられる。つまり、30万円利用して2割負担なら6万円だが、高額介護サービス費によって3万7200円に抑えられるというわけである。

さらに現役並みの所得(単身で年収383万円以上)がある人は自己負担の上限額が4万4400円に引き上げられている。介護保険では収入に応じて相応の負担を求める方針を打ち出しており、それが色濃く反映されているのだ。

もうひとつ知っておきたいのが、特別養護老人ホームへの入所条件である。有料老人ホームなどに比べて利用料も安く、要介護度が高い人でもケアが受けられるなどのメリットがあるが、入所待ちは50万人を超えている。そこで昨年4月から、新規入所は要介護3(排泄・入浴・衣服の着脱など日常生活全般に部分介助ないし全介助が必要な状態)以上の人に限定された。要介護1、2で入所できるのは、知的障害や精神障害などもあって地域で安定した生活を続けるのが困難など、一定の事情がある場合に限られる。

親の介護は突然、わが事になるケースが少なくない。

状態によっては、介護保険ではカバーできない内容のサービスを自費利用するなど、さらに負担が増すケースもある。親の介護費用は親の年金や資産から出すのが基本だが、それができない場合もある。親の介護が自身のライフプランに影響することもあるので、介護保険の制度改正には無関心ではいられない。

(構成=高橋晴美)
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