自分の長所や短所は、他人という鏡に映って初めてわかる。面と向かって「君はこうだ」と言ってくれる場合もあるし、ちょっとした言葉、しぐさ、表情に、自分の姿が反映されることもある。
問題は、せっかくのシグナルを見落としていることも多いということだ。
例えば、物事を積極的にやり、さまざまなことで成功しているのはいいのだけれども、半面、自慢話が多いという人がいる。自分がいかに素晴らしいか、という話を少し控えれば、さらに良い人になるのに、もったいない。
そのようなケースでは、周囲の人はたいてい、「おまえ、自慢話が多いよ!」というシグナルを出している。言葉に出さないまでも、表情や、反応で、それが感じられる。
ところが、本人が気づかない。時には、面と向かって言っても、「そうかなあ」と涼しい顔をしている。せっかくの他人という「鏡」を、活かしきれていないのである。
個人だけでなく、日本という国も同じこと。個性において、長所と短所は表裏一体なのであって、良いところばかり、悪いところばかりということはありえない。
日本とは異なる文化、歴史を持つ人たちの心の「鏡」に映った自分たちの姿を、感受性豊かに受け取る。そのようなプロセスを経て、私たちは日本という国のあり方についての「メタ認知」を立ち上げることができるのだ。
2020年の東京オリンピックは、私たちが他人という「鏡」に自分を映してみる、最大のチャンス。短所と長所の両方を、冷静に見つめよう。